貸借対照表を活用しよう!見方や財務分析の解説・業界別の指標と対策も

「貸借対照表を活用し、自社の財政状況を把握したい。」

不安定な情勢の中で変化のスピードが加速している今の時代、経理担当者としてこのように考える方も多いのではないでしょうか。

経営上どのような一手を選ぶか、その判断の材料になるものの一つが貸借対照表を使った企業の財政状況の正確な把握です。
貸借対照表を使えば、自社の財政状況を客観的に把握することができ、問題点を見つけることができます。この記事では貸借対照表の読み方、財政状況の把握の仕方や業界別の指標も解説します。

10年間、中小企業で経理を担当してきた筆者も、経営者とのミーティングで貸借対照表を使っていました。特に会社が経営上大きく舵を取る時には貸借対照表は重要な判断材料となります。筆者の経験も合わせて記事にしましたので参考にしていただけると嬉しいです。

貸借対照表とは?

貸借対照表とは決算時(または一定時点)に作成する財務諸表の一つです。貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書と合わせて財務三表といい、決算書の中でも最も重要とされる、経営に欠かせないデータです。
貸借対照表

貸借対照表が表すものは会社の財政状態

貸借対照表から読み取れるものは決算時における会社の財政状態です。その会社は資金をどう運用しているのか、その資金をどのように調達したか、また会社自体にはどれくらいお金があるのかを読み取ることができます。

貸借対照表の構造

貸借対照表では左に一つの箱、右に上下に重なる二つの箱があり、左:資産 右上:負債 右下:純資産 となっています。資産=負債+純資産という形式になっており、左右の合計が必ず一致します。左側は運用形態、右側は調達源泉と言われています。

英語ではBalance sheetと呼ばれているので、B/S(ビー・エス)ともいいます。

貸借対照表の3つの要素『資産』・『負債』・『純資産』

貸借対照表を構成する3つの要素は資産負債純資産です。それぞれ具体的に見ていきましょう。

資産の部はプラスの資産

資産は会社にあるプラスの資産です。お金そのものや将来お金になりうるものです。どうやって企業活動(運用)しているか、があわられています。

資産の部は流動資産、固定資産、繰延資産の3つに分かれ、通常は現金化しやすい順番に並んでいます。それぞれ詳しくみていきましょう。

流動資産

流動資産とは、会社が通常営業する中で保有する資産や1年以内に現金化または費用化できる資産のことです。

  • 現金預金
  • 売掛金
  • 短期貸付金
  • 有価証券
  • 商品

などが該当します。

固定資産

固定資産とは、会社が通常営業するサイクルや1年以内にで現金化する予定のない資産です。

  • 土地建物
  • 工具器具備品
  • 車両運搬具
  • 特許権
  • 著作権
  • 投資有価証券

などが該当します。

繰延資産

繰延資産とは会社が支払った費用のうち、将来1年以上にわたって会社に利益をもたらすと考えられる資産のことです。本来は費用であるため、現金化できる性質の資産ではありません。

  • 株式交付費
  • 開発費

などが該当します。

負債の部はマイナスの資産

負債は会社にあるマイナスの資産です。企業活動(運用)しているお金をどのように生み出しているか、資金の調達の仕方があらわれています。こちらは流動負債と固定負債から成り立っています。

流動負債

流動負債は1年以内に返済期限が来る負債のことです。

  • 支払手形
  • 買掛金
  • 短期借入金
  • 未払金
  • 前受金
  • 預り金

などが該当します。

固定負債

固定負債は返済期限が1年以上先の負債のことです。

  • 長期借入金
  • 社債
  • 退職給付引当金

などが該当します。

純資産の部は会社の財産

純資産は会社の財産で自己資本とも言われ、返済不要のお金です。株主から出資された資本金、内部留保として会社が営業して積み上げてきた利益などです。

  • 資本金、利益剰余金などの株主資本
  • 有価証券評価換算差額金
  • 新株予約権

などが該当します。

貸借対照表を活用して財務分析しよう!

ここからは応用編です。貸借対照表を使うと自社や取引先の財政状況を把握することができます。指標や業界別の平均値も載せていますので参考にしてください。

財務分析とは?

財務諸表を使って企業の経営状況を分析することです。

「安全性」「収益性」「活動性」「生産性」「成長性」をはかることができます。それらの財務分析の中で「安全性」を分析する時に使うのが貸借対照表です。

貸借対照表でできる財務分析

「安全性分析」は「健全性分析」とも言われ、会社の負債の支払い能力、倒産のリスクを知ることが出来ます。自己資本比率流動比率と当座比率固定比率の3つの視点から分析してみましょう。

安全性分析1.自己資本比率 どのような財務状況か?

自己資本比率とは総資本のうち、どれくらい自己資本でまかなわれているかを示す数値で、会社の財務体質を知るのに有効とされています。

資本とは事業をする元手のことで、自己資本は返済義務のないお金(=純資産)、総資本は負債と純資産の合計額です。
返済義務のないお金をたくさん持っている会社は倒産しにくい、ということが言えます。会社の健康診断とも言えるでしょう。

自己資本比率の計算の仕方

自己資本率(%)=純資産÷(負債+純資産)×100

貸借対照表の右側の部分を使ってもとめます。

自己資本比率の業界別目安

一般的には自己資本比率が30%〜40%あれば倒産リスクは低いと考えられます。自己資本比率の目安は業種によって変わってきます。以下、平成29年度の中小企業実態基本調査の数値を引用しますので参考にしてください。

自己資本比率(%)

建設業 40.84
製造業 45.60
情報通信業 55.22
運輸業,郵便業 35.32
卸売業 38.01
小売業 36.15
不動産業,物品賃貸業 36.58
学術研究,専門・技術サービス業 59.92
宿泊業,飲食サービス業 20.83
生活関連サービス業,娯楽業 36.14
サービス業
(他に分類されないもの)
42.23

 
参考:中小企業実態基本調査

自己資本比率が低いときの改善策

自己資本比率が低かった場合、まずは利益をあげて利益余剰金を多く会社に残すということが挙げられます。会社としての安定性を出していく一番シンプルな方法です。
また、社内での利益をあまり生み出していない部門や固定資産を整理することで、それにまつわる負債も圧縮でき、総資本を小さくすることで結果的に自己資本比率を高めることもできます。

安全性分析2.短期の支払い能力は? 流動比率と当座比率

流動比率は会社の短期的な支払い能力を表しています。また、さらに厳しく短期の支払い能力を見る時には当座比率を使いますのであわせて見ていきましょう。

流動比率の計算式

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

1年以内に現金化できる資産(=流動資産)が1年以内に返済しなければならない負債(=流動負債)をどれだけうわまわっているかによって求められます。

流動比率の業界別目安

流動比率の理想となる数値は200% 以上と言われていますが、業界やそれぞれの経営者考え、リスクの取り方によって変わってくるでしょう。

会社の規模や業態によって変わってきますが、一般的には130%〜150%あれば短期的な支払い能力は問題ないであろうとされます。逆に流動比率が100%を切ってしまうと支払い能力が不安視されます。
以下、平成29年度の中小企業実態基本調査の数値を引用しますので参考にしてください。

流動比率(%)

建設業 173.55
製造業 194.55
情報通信業 254.35
運輸業,郵便業 155.04
卸売業 156.57
小売業 158.32
不動産業,物品賃貸業 169.16
学術研究,専門・技術サービス業 193.00
宿泊業,飲食サービス業 104.51
生活関連サービス業,娯楽業 142.80
サービス業
(他に分類されないもの)
215.56

 
参考:中小企業実態基本調査

流動比率より厳しい当座比率とは

当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100

当座比率は流動資産の中でも換金性の高い当座資産を流動資産でわってもとめます。

流動資産には1年以内に換金できない可能性があるものも含まれています。例えば、売れると見込んでいた商品が急にライバル企業の出現で売れなくなることもあるかもしれません。

当座比率ではそのようなことが起こりにくい現金や預金、売掛金などで流動負債を返済できるか?という指標になります。
当座比率の中にも売掛金など、場合によっては回収が難しい案件も含まれていることがありますので、注意が必要です。

流動比率が低いときの改善策

流動比率が100%を切ってしまうときは資金繰りに注意が必要です。流動資産の中で回収できるものは早めに回収し、流動負債の支払い期限のを伸ばすなどして、改善を試みましょう。

安全性分析3.固定比率 長期の支払い能力は?

固定比率は、固定資産への投資のうちどれくらい自己資本で賄われているかかを示す数値です。長期的な支払い能力を知ることができます。
固定資産の支払いは一般的には長期に渡りますので、自己資本でまかなわれていた方が安全性が高いとされています。

固定比率の計算式

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100

固定比率は会社の固定資産における自己資本の割合をもとめます。

固定比率の業界別目安

固定比率が100%以下であると安全、120%が許容範囲とされています。固定資産への投資を自己資本だけでまかなわれていることになるからです。以下に平成29年度中小企業の業界別目安を取り上げますので参考にしてください。

固定比率(%)

建設業 76.72
製造業 97.48
情報通信業 63.80
運輸業,郵便業 156.15
卸売業 87.24
小売業 118.09
不動産業,物品賃貸業 184.49
学術研究,専門・技術サービス業 92.42
宿泊業,飲食サービス業 346.59
生活関連サービス業,娯楽業 187.43
サービス業
(他に分類されないもの)
87.91

 
参考:中小企業実態基本調査

固定比率が低いときの改善策

固定比率は業界によってかなり変わってきますので、一概に比較できるものではありません。
即効性があるのは固定資産に見直しをし、利益を生んでいないものは売却するなどして固定資産を圧縮することです。また、資本の増資や内部留保を増やすことが大切です。

財務分析』について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

財務分析とは?やり方や必ず抑えるべき4つのポイントを紹介!

筆者の経験

筆者は過去に、従業員30名規模のクリエイティブ業界の会社の経理を1人で任されていた経験があります。中小企業の経営者には損益計算書は読めるけれど、貸借対照表はわからないという方も多いようで、その会社の社長も自社の経営状況を正確に把握できていませんでした。
入社したての頃はリーマンショックの影響でその会社も経営の立て直しが必要な時でした。そこで筆者は貸借対照表を使って自社の経営状況を分析し、社長とミーティングをセッティングして財政状況を説明をしたところ、とても喜ばれ経営の判断に一役買うことができました。

まとめ

貸借対照表はいわば会社の財務状況の決算時のスクリーンショットです。財務状況は刻一刻と変化していますので、前年、前々年のものと比較して数値の増減を見て分析することも大切です

今からは何が起こるかわからない世の中ですので、自分の会社の経営状況を正確に把握し、常にその状況を経営者とシェアしておくことで決断が迫られた時の重要な情報を提供することができるでしょう。

経理担当としての見解を添えて報告することで、経営者は冷静な判断がしやすくなります。
また、貸借対照表の基本やこの記事にある指標の使い方を理解していれば、自社だけ出なく取引先の分析などにも大いに役立てることができます。ぜひご活用ください。

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