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保証料とは?信用保証料の仕訳と償却処理について詳しく解説!

更新日:2023.05.23

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虫眼鏡

会社が事業活動をしていくうえで資金は必要です。手元資金だけで会社を経営していくことは難しく、多くの会社は借入をしています。
金融機関で借り入れをするには連帯保証人や担保が必要ですが、用意できない中小企業の場合は信用保証協会に信用保証してもらい借入することがあります。その信用保証に対する手数料を信用保証料といいます。通常は「保証料」と簡略していわれます。

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保証料は信用保証をしてもらった借入時に一括で支払います。借入期間が5年・10年であっても一括払いです。そのため、すべてを借入時に費用計上せず長期前払費用として償却していくのが一般的です。
この記事では長年経理を担当した筆者が、保証料と処理方法について仕訳もふくめ詳しく解説します。

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保証料とは

保証料といえば、経理関係では「信用保証料」をさします。信用保証料は金融機関から借入する場合に、連帯保証人や担保の代わりに信用保証協会から信用保証をうけるために支払う手数料です。運転資金や設備投資のための借入金が対象となります。
借入期間の返済について保証してもらうため保証料は一律ではありません。数カ月の短期借入から最長15年の長期借入までを対象としており、その期間の長短や借入額、返済方法により保証料は算出されます。

信用保証とは

信用保証制度の仕組み

保証料を考えるうえで信用保証を知らなければなりません。信用保証は47都道府県と横浜市・川崎市・名古屋市・岐阜市にある公的機関である信用保証協会の制度です。
信用保証制度は中小企業・小規模事業者が金融機関から事業資金を調達する際に、本来は連帯保証人や担保で保証すべき信用を信用保証協会が保証するものです。事業者の資金調達をサポートすることを目的としています。
借入時の信用を担保するだけでなく、返済が滞った場合は信用保証協会が金融機関に対し代位弁済します。ただし、協会が弁済した金額は会社が信用保証協会に返済しなければなりません。

引用:名古屋市信用保証協会

保証料の計算方法

保証料は基本的に借入時に一括で信用保証協会に支払います。借入金の返済方法により料金の計算方法がことなりますので計算方法を確認しましょう。

【一括返済の場合の保証料】
借入金×保証期間(月数)÷12カ月×保証料率
【均等分割返済の場合の保証料】
借入金×保証期間(月数)÷12カ月×保証料率×分割返済係数

例えば、借入金1,000万、保証料率1.15%、保証期間12カ月の一括返済の場合は
借入金10,000,000円×保証期間12カ月÷12カ月×保証料率1.15%=115,000円
仮に月々返済として48回の均等分割返済の場合は
借入金10,000,000円×保証期間48カ月÷12カ月×保証料率1.15%×分割返済係数0.55=253,000円
このように算出します。保証料率や分割返済係数は次の図のように決まっています。

保証料率
保証料率
分割返済係数
分割返済係数


引用:和歌山県信用保証協会

返戻がある場合の保証料の支払と処理方法

保証料は原則として借入した時点で期間分を一括で支払いますが、処理方法は返戻条件により異なります。
保証料は借入時点で未経過期間分の保証を予定通りうけるかは未定です。繰上げ返済して保証期間が短縮した場合に、短縮期間の保証料を返金されるか否かが処理方法の判断ポイントとなります。
まずは保証料が将来返金される可能性のある契約の処理方法について説明します。保証期間によって仕訳もかわりますので注意してください。

1.保証期間が当期期間内の場合

保証期間が当期期間内の場合は支払手数料として借入時に一括計上します。月次決算で正しい数字を把握したい場合は前払費用として毎月振替する場合もあります。
【当期費用として支払時に一括計上する場合の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料50,000預金50,000

【支払時に前払費用として計上する場合の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
前払費用50,000預金50,000

【毎月費用に振替計上する場合の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料10,000前払費用10,000

2. 翌期以降の保証期間が1年未満の場合

決算日の翌日から1年以内に期限がくる短期のものは流動資産として前払費用で処理します。当期の期間に該当する分は支払時に費用計上します。期がかわれば、前払費用を当期費用に振替します。
【翌期以降の保証期間が1年未満の場合の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料(当期)60,000預金120,000
前払費用(翌期)60,000  

3. 翌期以降の保証期間が1年以上の場合

決算日の翌日から1年を超えて期限がくる長期のものは投資その他の資産として長期前払費用で処理します。一括で保証期間60カ月分の保証料を支払う場合は期間ごとに該当する勘定科目に振分けします。
実務的には「長期前払費用」でまとめて計上している会社もあると思います。また、会社の会計方針で「長期前払費用償却」の勘定を用いる場合もありますので自社の勘定科目一覧を確認して処理するようにしましょう。科目一覧で確認できなければ、試算表を残高なしの科目も含め出力してみると全科目が載っていますので、わかりやすいかもしれませんね。
【保証期間により勘定科目を振分ける場合の支払時の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料(当期)60,000預金600,000
前払費用(翌期)120,000  
長期前払費用(翌期以降)420,000  

【長期前払費用で処理する場合の支払時の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
長期前払費用600,000預金600,000

【長期前払費用を毎月費用に振替する場合の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料10,000長期前払費用10,000

【長期前払費用を決算時に経過月数(6カ月)分だけ費用に振替する場合の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料60,000長期前払費用60,000

4. 繰上げ返済して返戻金が入金した場合

繰上げ返済して保証期間が短縮した場合の返戻金は、全額返済が完了した時点で信用保証協会に届出して手続きする場合と返済期間中の返戻があります。繰上げ返済にかかる保証料の全額ではなく一部が返金されることが一般的です。1,000円未満は返金しないと規程されている場合もあります。
【返済完了後に返戻金が入金した場合の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
預金30,000雑収入30,000

 
返済期間中に返戻分が入金した場合は長期前払費用に戻します。
【保証期間中に返戻金が入金した場合の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
預金30,000長期前払費用30,000

返戻がない場合の保証料の支払と処理方法

保証料が将来返金される可能性のない契約場合は繰延資産と認識します。借入期間で繰延資産償却していきます。決算時に当期分を償却する場合もありますが、月次決算を重視する場合や、4半期決算を行っている会社では毎月振替している会社もあります。
ただし、20万未満の保証料は一括費用処理することが認められていますので支払時に処理します。
【保証料の返戻がない契約の支払時の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
長期前払費用(繰延資産)600,000預金600,000

【償却時の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
繰延資産償却10,000長期前払費用(繰延資産)10,000

【20万未満の保証料は一括費用処理した場合の仕訳例】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料(非課税)150,000預金150,000

信用保証の注意点

信用保証は資金を借りるときに金融機関に対して連帯保証人や担保を用意できない場合に、信用保証協会が保証するものですが、会社は信用保証協会に対して連帯保証人や担保を用意しなければなりません。
また、保証料を支払えば借入の返済不能リスクがなくなるわけではありません。協会が弁済した分は協会に支払うことが前提です。
保証料は金融機関への支払利息に加えて保証料という名目の手数料を上乗せして支払っていると認識しておきましょう。

信用保証以外の保証料

経理では通常「保証料」といえば信用保証料ですが、最近はそれ以外にも保証料と名の付く支払を目にします。いくつかご紹介します。

1.賃貸保証料

賃貸保証料は不動産を借りる場合に家賃保証会社に支払う保証金のことです。事務所や店舗、社宅を借りる場合にオーナーから加入を求められます。社宅で法人契約なら加入しなくてよい場合もありますが、オーナー次第で借りる会社に選択権がないのが実状です。
賃料の未払いが発生した場合に家賃保証会社が立替払いするもので1年単位や2年契約なら期間単位で契約する場合など色々なパターンがあります。保証期間によっては前払費用や長期前払費用に該当することもあります。

2.連帯保証料

連帯保証料は会社が役員個人に連帯保証人となってもらう代わりに支払う料金です。信用保証について説明してきましたが、協会に支払う保証料を役員に支払うイメージです。
役員が連帯保証しているにもかかわらず保証料を設定していない会社もあると思いますが、節税対策として実施している会社もあるのではないでしょうか。
連帯保証料は自由に決められるわけではありませんが、判例から信用保証協会の最高保証料率を適用して算出される額が上限として認められています。

まとめ

会社の費用はすべてが発生時に費用計上できるものばかりではありません。その内容により長期にわたり償却していくものもあります。
今回ご説明した保証料以外にも、保証金なども長期前払費用として償却していく場合があるため、実務で長期前払費用の償却処理をする機会は多くあります。
基本的に仕訳は同じですから、この機会に覚えておくとよいかと思います。

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