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預り証とは?領収書との違いや注意点、実務上のリスクについて解説!

更新日:2023.08.17

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預り証

「預り証」は経理担当者であればよく利用する書類です。「領収証」との違いは、単純に預かっただけか、受領が確定したか、ということは分かっていても、詳しいところまでは分からない場合も多いのではないでしょうか。「預り証」がどのような性質のものなのかを把握していないと、思わぬトラブルに巻き込まれることもあります。

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この記事では、「預り証」には法的にどのような意味があるのか、どんな種類があるのか、について解説します。それを踏まえたうえで、改めて「預り証」の書き方を確認します。
さらに、押さえておくべきポイントとして、「領収証」との違い、扱い方の流れについて、実際の事例に触れつつ説明します。また、「預り証」には印紙税がかかる場合があるので、それについても解説します。

筆者は、会計事務所勤務時代に、一枚の「預り証」が経理や税務に大きな影響を及ぼす事例も見てきました。そのような経験から、実務上のリスク面についても詳しく解説します。

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「預り証」とは何か?法的にはどんな意味を持つ?

「預り証」とは、読んで字のごとく、物を預かった証明書類です。この「預かった」ということの法的な意味は、一時的に占有、保管しているということです。特に重要なのは、所有権がまだ移転していない、ということです。
民法上、物の所有権の移転は、当事者どうしの契約によっていつ移転するのか定めることができるとされています。
「預り証」は、預かった側と預けた側が、その物の所有権が移転していないことについて合意していることを示しています。預けた側は、「預り証」があることで、預かった側に対して所有権を主張できるわけです。その意味で、法的には非常に重要な書類と言えます。
これに対して、「領収証」は物を領収して、領収した側に所有権が移転したことを証明する書類になります。

「預り証」の種類はどのようなものがあるの?

「預り証」を用途、目的によって分類すると、次のような種類があります。

1.代金支払目的「預り証」
経理が扱う際に、最も一般的、重要な「預り証」は、売上代金の「預り証」です。売上代金の一部として、手付金や内金を預けることを証明する書類です。契約内容によりますが、手付金を預けただけでは、その所有権は完全に移転しているとは言えません。

2.担保目的「預り証」
物や金銭を担保として預けたり差入れたりしたことを証明する書類です。たとえば、質屋が物を預かり金銭を融通するケース、不動産賃貸業のオーナーが敷金を預かるケースもこれに該当します。預かった物は条件の成就次第で、返却します。

3.預託目的「預り証」
金銭、有価証券等を運用、積み立てを目的として預かったことを証明する書類です。金融機関の預金の預入や投資信託の預託などのケースが該当します。

4.運搬・保管目的「預り証」
運搬や保管目的で預かったことを証明する書類です。

「預り証」の書き方は?

「預り証」には、証明書類としての機能を果たすため、最低限、次の項目を記載すべきでしょう。

  • 預けることを依頼した者の名称、住所
  • 「預かった」という文言
  • 預かった物の内容、金銭ならば金額
  • 預かった年月日
  • 返却条件(返却する場合)
  • 預かった者の名称、住所

「預り証」を受取った後はどうなるの?返却するときは

代金支払目的の「預り証」のケースでは、手付金等の対価の売買が成立したときに、「領収証」と交換する場合が多いと思われます。

たとえば、不動産売買のケースでは、契約時に手付金として代金の1割程度を買い手に預けます。しかし、契約には半月から1カ月の手付解除、融資特約解除の白紙解約期間がもうけられています。
白紙解約期間が過ぎるまでは、代金の所有権は確定しません。期間が過ぎ、不動産を引き渡すときに残金の決済が行われ、手付金も代金として確定することになります。そして、「預り証」を手付金と残金の合計額の「領収証」と交換することになります。

担保目的や預託目的、運搬・保管目的の「預り証」のケースでは、「預り証」は、預かった物や金銭を返却してもらうときに、それらと交換することになります。担保目的のケースでは、担保条件が成就してしまったら、預かった物や金銭を返却しないので、そのときに破棄することになります。

たとえば、不動産賃貸業では、オーナーは入居者から敷金を預かり、「預り証」を発行します。入居者が退去するときに、「預り証」と引き換えに敷金を返却します。ただし、原状回復などの費用を差し引いて残金がなければ返さないことが通常ですから、その場合、「預り証」は効力を失うので、破棄することになるでしょう。

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実務上考えられるリスクとは?

「預り証」に関する実務上のリスクは、何と言っても、「預り証」を紛失してしまったらどうなるのか、という問題でしょう。預けた金銭や物は返却してもらえるのでしょうか?
「預り証」は、「領収証」とは違うから、印紙は貼らなくていいと思っていませんか?「預り証」にもケースによっては印紙税がかかってくる可能性があるため、注意しなければなりません。
また、「預り証」は所有権がまだ移転していないことを示すものですから、決算ではその取引を原則計上することができず、所得税、法人税の計算にも影響を与えることになります。

「預り証」を紛失してしまったら

不動産取引や通常の商取引での手付金、内金として金銭を支払った場合、その旨が契約書やその他文書で合意されていることがほとんどです。また、単純に物を預ける場合であっても、通常は、複写した「預り証」を相手側にも残します。
したがって、金銭や物を預けたことは当事者どうしが認める事実ですから、「預り証」を紛失したとしてもそれほど問題はないでしょう。
預かった側は、後から「預り証」が出て来て返却を二重に要求されるリスクがあるので、紛失した旨を証する書類の作成を求められる可能性があります。

印紙税はどのような場合にかかるのか?印紙を貼らないリスク

物を預かったときの「預り証」には印紙税はかかりません。ただし、金銭や有価証券の「預り証」では、5万円以上の場合、印紙税がかかると考えるべきです。印紙税は、売上代金の場合と、売上代金以外の場合で次のような金額になります。いずれも、金額の記載がない場合、200円です。
印紙税』について詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。

売上代金の場合

5万円未満非課税
5万円以上100万円以下200円
100万円超200万円以下400円
200万円超300万円以下600円
300万円超500万円以下1,000円
500万円超1,000万円以下2,000円
1,000万円超2,000万円以下4,000円
2,000万円超3,000万円以下6,000円
3,000万円超5,000万円以下10,000円
5,000万円超1億円以下20,000円
1億円超2億円以下40,000円
2億円超3億円以下60,000円
3億円超5億円以下100,000円
5億円超10億円以下150,000円
10億円超200,000円

売上代金以外の場合

5万円未満非課税
5万円以上200円

出典:国税庁タックスアンサー
印紙を貼り忘れた場合、税務調査で指摘されて見つかったときは、規定の印紙税額の3倍の金額を過怠税と併せて納めることになります。

決算での取扱いはどうなるの?所得税、法人税への影響は

売上代金の一部として「預り証」を発行している場合、決算での取扱いには注意が必要です。
代金の金銭としての所有権だけを考えれば、代金を受け取った側の所有権は確定していないので、売上計上しないものと言えます。
物品の売買では、代金を支払っていても、物品が引き渡されなければ売上は確定しません。ですから、物品を引き渡してなければ売上計上しない、という取扱いが原則になります。
しかし、サービスを提供する契約では、売上の確定時期が少々異なります。サービスの提供が行われることが確定していれば、その部分については売上計上することになります。
たとえば、弁護士業では、手付金と成功報酬とを分割して請求するのが一般的です。手付金を受け取った時点で、既に手付金に対応するサービスの提供が行われることは確定していると考えられ、売上計上しなければなりません。
売上計上するかしないか、というのは、所得税、法人税の計算にも関わってきます。収入、益金の計算に含めるかどうか、ということはもちろん、それに紐づいている経費、損金を計算に含めるかどうか、ということにも影響します。
本来その期の売上に計上すべきものを計上せずにその分の法人税、所得税を納めていなかった場合、税務調査では、売上の期ずれとしてチェックされるポイントの一つになるリスクもあるので、要注意です。

まとめ

「預り証」には様々な種類がありますが、最大のポイントは、預けただけで所有権が移転しないことを示す書類であるということです。
通常は、「預り証」は「領収証」と交換したり、物品の返却の際に相手側に返してしまったりするものです。
売上代金の一部をやりとりした場合で「預り証」があったら、その取扱いには注意しなければなりません。
印紙税がかかるケースがほとんどですし、決算の時にはその期の売上に含めないといけないケースもあります。

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