スループット会計とは?概念や必要になった背景、実務での利用法について徹底解説

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    工業簿記で学ぶような伝統的な原価計算に、新たな視点を加えたスループット会計という管理会計手法をご存知でしょうか。製造業において、原価計算を用いて利益を求める手法は長く用いられてきた方法ですが、時代の変遷による消費者行動の変容を理由に、2000年代頃から、より経営視点の会計が求められるようになりました。

    本記事では、スループット会計の基礎を学びつつ、このような管理会計手法の需要が増した背景や、実務での利用法まで詳しく知ることができます。ぜひ、最後までご覧頂ければ幸いです。

    スループット会計とは

    スループット会計は、従来の原価計算に実際の経営に関する視点をプラスしたような考え方になっています。主に製造業の管理会計手法として用いられておりますが、従来の原価計算と決定的に違うところは、原価計算によって弾き出される数字をいかに最適化するかという視点です。

    スループット会計には、明確な目的があります。それは「稼ぎ続けるための会計」です。現時点では、スループット会計の中身についてまだ理解していない状態なので、この言葉の意味があまりわからないと思いますが、スループット会計を理解する上で最も重要であり、基礎となる考え方ですので、先にお伝えしています。

    スループット会計が重要になった背景

    そもそも、なぜ稼ぎ続けるための会計が必要になったのかを、時系列で追って解説していきます。

    日本は、大戦での敗北から凄まじい勢いで立ち直ってきました。これを支えたのは、徹底的なモノづくりでした。世界的にまだあまりモノが無かった時代でしたから、日本が作るモノは、日本国内のみならず全世界から必要とされ、その利益が高度経済成長へと繋がっていきました。

    売り手市場から買い手市場への時代の変遷

    しかし、世界的にモノに溢れるようになってからは、今までのような手段ではなかなか利益を上げることができなくなってきました。製造業においては、バブルを契機に明確な売り手市場から買い手市場への変遷が起こりました。ただ品質の良いモノを作れば売れる時代が終わり、あらゆる業種で商品を売るための仕事が台頭しました。コンサルティングやマーケティングが今のような形で普及してきたのも、世界的に買い手市場になってきたことが一つの原因といえます。

    このような世界において、従来の原価計算では、不良在庫がそのまま損失を食い潰すことになり、損益計算書(P/L)上の利益が過大に計上され、実際の経営成績と乖離してしまう状態が生まれました。ここで、企業の成績を従来の方法よりも正確に導き出す救世主として現れたのがスループット会計なのです。

    損益よりもキャッシュフロー重視

    スループット会計は、損益よりもキャッシュフローを重視する考え方に基づいています。つまり、どれだけ損益計算書(P/L)上の利益が出たとしても、実際にキャッシュ(現金)として売上を回収できていなければ、それは意味を持たないことになります。

    つまり、不良在庫を多く抱えることは、スループット会計における「悪」であり、製造した製品がきちんと売れるようにする会計が、スループット会計を取り入れる目的の本質となります。

    スループット会計を構成する3つの要素

    ここまでで、スループット会計の考え方や、必要になった背景を見てきました。いよいよここからは、スループット会計の中身について見ていきたいと思います。

    スループット会計を構成する要素は、大きく分けて以下の3点があります。

  • スループット(Throughput)
  • 在庫(Inventory)
  • 業務費用(Operating Expense)
  • それぞれ順番に解説していきます。

    スループット(Throughput)

    「スループット会計」という名前のもとにもなっているスループットは、「販売によって生み出す貨幣」を表します。式は、

    スループット = 売上 - 直接材料費

    となります。売上から引かれているのは直接材料費のみとなっていますね。ここがスループット会計のミソで、スループットは、実際の販売によって生み出される貨幣を表すのですから、「企業が実際に売り上げた金額(売上)から、企業が実際に支払った金額(直接材料費)を引いて、いくら残るのか」が、スループットの評価軸となります。

    つまりスループットは、記帳のタイミングを従来の原価計算のように製造活動時点とはせず、販売時点にシフトさせ、実際にどれだけ利益を生み出したのかに限りなくフォーカスした指標と言えるでしょう。

    在庫(Inventory)

    一見すると、在庫は従来の原価計算と同じように思えるかもしれませんが、ここも大きく違っています。

    スループット会計における在庫は、「企業が販売を計画する材料等に投じた金額」を意味し、具体的には、原材料、仕掛品、製品に含まれる直接材料費の金額となります。

    従来の原価計算における「在庫」は、加工進捗度によって、直接材料費に労務費や製造間接費が増加するような考え方でしたが、スループット会計においては、あくまでも販売を主眼においた管理会計のため、取得原価のみが在庫として認識されます。つまり、在庫が増加すればするほど、「どれだけ損益計算書(P/L)上の利益が計上されたとしても、それは在庫過多によるもの」という見方が強まることになります。

    業務費用(Operating Expense)

    スループット会計における業務費用は、「在庫をスループットにするために使った費用」を意味します。在庫以外の全ての支出がここに含めれることになります。

    従来の原価計算においては、直接労務費や製造間接費などを細分化して各科目の金額を算出しますが、スループット会計における業務費用は、これらを区別せず、実際の支出額のほぼ全てを当てはめます。

    つまり、在庫の計算と相まって、実際に商品を売るためにどれだけの費用がかかったのかを、誰にでも理解がしやすい方法で求めたのが、業務費用となります。

    TOC(制約理論)によって3つの要素を評価する

    ここまでの説明で、スループット会計が、損益計算書(P/L)上の利益よりもかなりキャッシュフローを重視した管理会計手法であることがお分かり頂けたと思います。スループット会計は、実はある理論を基にして考えられた手法です。それが「TOC(制約理論)」です。

    TOCとは

    TOCを端的に説明すると、「売上によるキャッシュフロー(営業CF)を確保することを目的に、各工程のボトルネック(最大の要因)となる工程に注目して、スループットを最大化する」という考え方のことです。

    キャッシュフローについてもっと詳しく知りたい方はこちらも合わせてご覧ください。

    キャッシュフローとは?初心者向けに計算書の読み方について詳しく解説!!

    TOCによって、下記3つの考え方が生まれます。

  • スループットの最大化
  • 在庫の最小化
  • 業務費用の最小化
  • つまり、TOCを意識したスループット会計によって、営業キャッシュフローを最大化させ、手許により多くの現金が残ることになります。

    スループット会計を実務に利用するために

    これはスループット会計に限らずどの指標を参照する際にも必要なことですが、実際にスループット会計を実務に利用するためには、まず、現時点での3要素(スループット・在庫・業務費用)を算出する必要があります。幸い、原価計算を考えるよりも簡単な指標ですので、すぐに計算することができると思います。改めて各要素の定義をおさらいしましょう。

  • スループット = 売上 -(売り上げた製品に係る)直接材料費
  • 在庫 =(帳簿上の在庫のうちの)直接材料費
  • 業務費用 = 在庫以外の全ての支出
  • そして良い評価は、営業キャッシュフローを最大化させることで生まれ、下記基準を満たすものになります。

  • スループットを増大させること
  • 在庫を低減させること
  • 業務費用を低減させること
  • おわりに

    日本企業は、先進諸国に対して苦戦を強いられています。そこには、「売り手市場から買い手市場に変化したことで、今まで売れていたモノが売れなくなってしまった」という社会変遷があります。

    これを打開するためには、製造業であっても、卸売や小売と同様、需要を正確に捉えて、在庫や支出の管理を徹底する必要があります。そういった意味で、スループット会計は「無駄遣いや無駄造りが生じていないかをチェックするための会計」ということもできます。

    従来の原価計算に加えてスループット会計を取り入れることで、今までの決算書を違った視点から評価し、より良い経営にしていくための一助として頂ければ幸いです。