仕訳FAQ

資本金の仕訳方法は?減資・増資の会計処理や会社設立費用との違いも解説!

更新日:2023.06.30

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オフィス

会社を設立したばかりの時期は、個人の口座から会社関係の資金を拠出したり、また、会社経理も慣れていないこともあり、どのように会計処理の仕訳を行えばよいのか、悩むことが多いといえます。
特に、資本金の仕訳は、通常取引と異なりわかりにくいうえに、会社の財務状況を示す根幹となる部分であり、非常に重要です。
この記事では、筆者の会計事務所での勤務経験を踏まえて、資本金にかかわる取引の仕訳と、会社設立時の費用との違いなどについて徹底解説します。

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資本金の払い込み前後の仕訳

資本金とは、会社の事業を行う元手資金のことです。
資本金は、1円でもいいことになっていますが、開業後の運転資金になっていくので、資本金が多いほど資金繰りがよい会社ということになります。
また、資本金は原則として一度払い込むと、自由に減少してはならないものとされています。
資本の減少は、株主総会の特別決議と債権者保護手続きなどの厳格な手続きを経る必要があります。
資本金の払い込みは、会社からみると単純にその分だけ現金預金が増えたということになりますが、実務上では、会社設立と絡むため、個人口座に資本金を払い込んでから、それを会社口座に移す、という流れになります。
この間の仕訳について解説します。

資本金を払い込んだ時の仕訳

まず、会社設立時の実務からは現実的ではないですが、教科書的な資本金の払い込みの仕訳は、次のようになります。50万円の資本金を払い込んだ場合です。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
現金預金50万円資本金50万円資本金払い込み

会社からみると、50万円の現金預金が入ったことになり、借方が「現金預金」、貸方が「資本金」となります。

資本金を個人口座に払い込んだ時の仕訳

法人設立の段階では、まだ法人口座ができていません。
個人用口座に発起人名義で資本金50万円を入金した場合は、会社の口座と区別するために、次のように「預け金」勘定を用います。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
預け金50万円資本金50万円資本金払い込み

資本金を個人口座から会社口座に振り替えた時の仕訳

個人用口座に入金しておいた資本金50万円を、会社口座に振り替えた場合、次のような仕訳になります。
振り替えの際に、振込手数料660円がかかったものとしています。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
普通預金499,340預け金500,000普通預金に振替
支払手数料660

資本金を別段預金に払い込んだ時の仕訳

会社口座であっても、別段預金に資本金を払い込む場合もあります。
その場合は、次のような仕訳になります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
別段預金50万円資本金50万円資本金払い込み

創立費、開業費の仕訳

会社設立の際にかかる費用として、創立費と開業費があります。
創立費とは、会社の設立前に支出した費用で、次のような費用をいいます。

  • 会社を設立登記するために必要な登録免許税
  • 創立総会の費用
  • 証券会社などの金融機関の手数料
  • 発起人への報酬
  • 事業に従事する使用人への給与
  • 創立事務所などの賃借料
  • 株主を募集するための広告費
  • 株式申込証、目論見書などの印刷費用
  • 定款やその他の規則を制作するための費用

開業費とは、会社を設立してから、開業するまでにかかった費用で、次のような費用をいいます。

  • 発起人への報酬
  • チラシなどの広告宣伝費
  • 事業運営に必要な免許取得費用

創立費あるいは開業費として30万円支出した場合の仕訳は、次のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
創立費/開業費30万円現金預金30万円創立費/開業費

創立費や開業費は、法人税法上の繰延資産として、任意償却または5年均等償却が認められています。
任意償却を選択すれば、赤字の事業年度には償却せず、黒字の事業年度に償却して効果的な節税を行うこともできます。

会社口座開設前後の個人と会社とのやり取り

会社設立の前後は、会社口座が開設されていないことや、会社役員が会社業務に慣れていないことなどから、個人と会社の資金がきっちり分割されていないことがあります。
会社口座から資金を支出すれば、会社経費として通常の仕訳をすればよいだけですが、資本金が個人口座にある状態で、その資本金を会社経費に充当したり、または、個人支出に充当したりすると、会計処理をどのようにするか、問題が生じてきます。

会社口座開設前に資本金から会社経費を使用した時の仕訳

会社口座開設前に、個人口座に払い込んだ資本金50万円から、会社設立費用30万円を支払った仕訳は次のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
創立費30万円預け金30万円創立費支払い

会社口座開設前に資本金から個人支出をした時の仕訳

会社口座開設前ですと、会社資金という意識が希薄なため、個人の支出をしてしまうことがあります。
役員が、預け金として払い込んだ資本金から、10万円を個人支出した場合の仕訳は次のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
役員貸付金10万円預け金10万円役員貸付

会社の資金ですので、使ったら返済しなければなりません。
会社から一時的にその個人に貸し付けているという仕訳をします。

個人が創立費、開業費を立て替えた時の仕訳

個人口座から会社口座に資本金を移動する前に、創立費や開業費を支払っていた場合は、次のように仕訳します。
30万円支払ったとします。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
創立費/開業費300,000預け金300,000創立費/開業費

個人が会社経費を立て替えた時の仕訳

会社と個人の資金が明確に分かれておらず、個人が会社経費を一時的に立て替える場合もあります。
たとえば、会社の役員が消耗品費10万円を立て替えた場合は、次のように仕訳します。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
消耗品費100,000役員借入金100,000消耗品購入

会社資金を個人用に支出した場合と逆になり、会社が個人から立替分の資金を借りていることになります。

会社口座開設後の資本金にかかる仕訳

会社口座開設後、資本金にかかる取引をおこなうことがあります。
たとえば、新株発行して増資をしたり、または減資を行ったりするケースがあります。
増資をした場合でも、一部を資本準備金として積み立てることも可能です。
それぞれのケースについて、その意味と仕訳を解説します。

増資をおこなった時

増資には、有償増資と無償増資がありますが、新株発行をおこなって、株主や投資家から新たな出資を受ける場合は、払込期間を設けるのが一般的です。
払込期日が到来し、増資額が確定したら、資本金に振り替えます。
資本金は、減少させるのが厳しいため、一部を資本準備金として積み立てることもできます。
逆に、資本準備金の一部を資本金に組み入れるのが無償増資になります。

有償増資にかかる仕訳

株式100株を一株あたり1000円で発行し、払込みを受けた場合の仕訳は次のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
別段預金100,000新株式申込証拠金100,000払込み

払込期日が到来して増資額が確定したら、次のように資本金に振り替えます。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
新株式申込証拠金100,000資本金100,000振り替え
現金預金100,000別段預金100,000振り替え

資本準備金として積み立てる場合の仕訳

10万円の払込金額の2分の1を、資本準備金として積み立てる場合は、次のように仕訳します。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
新株式申込証拠金50,000資本金25,000振り替え
  資本準備金25,000振り替え

無償増資にかかる仕訳

新規に払込みを募るのではなく、積み立てておいた資本準備金を資本金に組み入れて増資することもあります。
無償増資とよばれます。
資本準備金50,000円を資本金に組み入れた場合、次のように仕訳します。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
資本準備金50,000資本金50,000資本組み入れ

減資をおこなった時

減資には、有償減資と無償減資があります。
有償減資は、減資して生じた剰余金を株主へ交付します。
これに対して、無償減資は、減資して生じた剰余金は株主へ交付せず、その他資本剰余金として積み立てたり、欠損補填に充てたりします。

有償減資にかかる仕訳

有償減資の例として、資本金を50万円減少させ、株主へ30万円交付した場合の仕訳は次のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
資本金500,000現金預金300,000交付
  その他資本剰余金200,000振り替え

無償減資にかかる仕訳

無償減資の例として、資本金50万円を減額し、その他資本剰余金に振り替えた場合の仕訳は次のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
資本金500,000その他資本剰余金500,000振り替え

無償減資では、欠損補填をするケースもあります。
資本金50万円を減額し、欠損補填した仕訳は次のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
資本金500,000繰越利益剰余金500,000欠損補填

まとめ

以上、資本金にかかわる会社仕訳がおわかりいただけたかと思います。
会社設立時は、会社と個人の資金が明確に分かれていないことがあるので、それらのやり取りが判別できるよう、仕訳には注意したいといえます。
また、資本金にかかわる取引は、通常取引と異なり、資本金の減少要件など、会社法の制限があるので、注意するようにしましょう。

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