仕入税額控除とは? 要件や計算方法を具体例でわかりやすく!

仕入税額控除とは、売上の消費税から仕入のために支払った消費税を差し引いて計算し、二重課税を防ぐ制度です。

仕入税額控除の計算方法は4種類あります。

  • 全額控除
  • 個別対応方式
  • 一括比例配分方式
  • 簡易課税制度
  • この記事では、仕入税額控除の考え方の基礎から計算方法まで丁寧に解説。

    筆者は上場企業で税務担当経験があり、消費税の計算も実際に業務として行っていました。

    わかりやすく具体例を使って説明するので、参考にしてください。

    仕入税額控除とは

    仕入税額控除とは、消費税を納める義務のある事業者が、仕入れにかかった消費税を差し引いて計算していいよ、という制度です。

    この章では、以下の3つを解説します。

  • 仕入税額控除の考え方の基本
  • 仕入税額控除の対象になる取引
  • 仕入税額控除を使うために必要な要件
  • まずはこの章で考え方を抑えましょう。

    仕入税額控除=仕入にかかった消費税を差し引くこと

    TAXと電卓

    始めに述べた通り、仕入税額控除とは「仕入にかかった消費税を差し引いて消費税の納税額を計算すること」です。

    といっても、わかりにくいので例を見ていきましょう。

    仕入税額控除の例

    スーパーで108円(本体100円+消費税8円)のりんごを買いました。

    スーパーはりんごを54円(本体50円+消費税4円)で仕入れています。

    この場合、スーパーが納税する義務のある消費税額は以下の図のようになります。

    仕入税額控除

    :消費税が8%の場合

    8円(課税売上の消費税)-4円(仕入れにかかった消費税)=4円

    このように、仕入税額控除とは、仕入れにかかった消費税を差し引いて、納付する消費税額を計算する仕組みのことを言います。

    仕入税額控除がなければ、仕入れの時にスーパーが払った消費税と、お客さんがリンゴを買った時に払った消費税の両方が税金になる「二重課税」の状態になります。

    仕入税額控除は二重課税を防ぐための仕組みです。

    仕入税額控除の対象になる取引

    仕入税額控除の対象になる取引は消費税のかかる「課税仕入」であること。

    非課税の取引や給与の支払いなどは、仕入れ税額控除の対象にはなりません。

    課税仕入れに含まれる取引には以下のようなものがあります。

    課税仕入れに該当する取引

    1. 商品などの棚卸資産の購入
    2. 原材料等の購入
    3. 機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入又は賃借
    4. 広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払
    5. 事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
    6. 修繕費
    7. 外注費

    詳しくは国税庁「No.6451 仕入税額控除の対象となるもの」に掲載されています。

    仕入税額控除の要件

    仕入税額控除の適用を受けるには、帳簿と請求書の保存することが要件です(請求書等保存方式)

    帳簿と請求書には以下を記載して、7年間保存することが義務付けられています。

    帳簿への記載事項

  • 相手方の氏名又は名称
  • 仕入れを行った年月日
  • 仕入れに係る資産又は役務の内容
  • 仕入れに係る支払対価の額
  • 請求書への記載事項

  • 書類の作成者の氏名又は名称
  • 課税資産の譲渡等を行った年月日
  • 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
  • 課税資産の譲渡等の対価の額
  • 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
  • 帳簿・請求書の両方を保存しておく必要があります。

    請求書には一般的に上記の内容が書かれているので、経理の実務としては保存・管理と帳簿への記載にとなります。

    ただし、税込み30,000円未満の場合は請求書の保存は必須ではなく、帳簿の保存のみでよいことになっています。(国税庁「No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」)

    帳簿への記載事項や複数商品を1回で取引した場合などの詳しい内容については、国税庁「No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項」で確認してください。

    仕入税額控除の計算方法

    オフィス
    仕入税額控除の考え方の基本や対象になる取引、仕入税額控除の適用を受ける要件である帳簿・請求書の保存について見てきました。

    ここからは、仕入税額控除の具体的な計算方法を紹介していきます。

    仕入税額控除の計算方法は4種類あります。

  • 全額控除
  • 個別対応方式
  • 一括比例配分方式
  • 簡易課税制度
  • それぞれの計算に必要となる「課税売上割合」の考え方と計算方法を解説した後で、4つの仕入税額控除の計算方法を解説していきます。

    課税売上割合の計算方法

    仕入税額控除の計算をするのに欠かせないのが「課税売上割合」の考え方。

    課税売上割合は、「売上のうち何パーセントが、消費税の課税対象になる売上だったのか」を表します。

    課税売上割合の具体的な計算の仕方は以下の通りです。

    課税売上割合=(課税売上+免税売上)/(課税売上+非課税売上+免税売上)

    国税庁「No.6405 課税売上割合の計算方法

    課税売上は税抜き金額で計算することに注意。

    課税売上割合が95%を超えると、以下で紹介する「全額控除」を利用でき、税金の計算上は有利になります。

  • 課税売上割合が95%以上:全額控除が使える
  • 課税売上割合が95%未満:個別対応方式or一括比例配分方式を選択
  • ただし、課税売上が5億円を超える事業者は、全額控除は選択できず、個別対応方式もしくは一括比例配分方式で仕入税額控除を計算します。

    なお、簡易課税制度を選択している場合は課税売上割合は関係ありません。

    それでは、仕入税額控除の計算方法について1つずつ解説していきます。

    仕入税額控除の計算方法①全額控除

    全額控除では、課税仕入れにかかった消費税のすべてを控除します。

    全額控除が使える事業者は、年間の課税売上が5億円未満かつ、課税売上割合が95%以上の場合です。

    控除額が大きくなり、税金の計算上いちばん有利(納税する金額が少なくて済む)です。

    また、仕入税額控除の計算も、仕入れが課税取引かそうでないか、を分けるだけでよいので事務処理の手間も少なくて済みます。

    具体例で見てみましょう。

    仕入税額控除【全額控除】の例
  • 課税売上:1,100万円(うち消費税100万円)
  • 仕入:550万円(うち消費税50万円)
  • 光熱費:110万円(うち消費税10万円)
  • ※消費税率は一律10%とする。

    仕入税額控除の金額と納付する消費税額は以下の通りです。

  • 売上にかかる消費税:100万円
  • 仕入税額控除:50万円+10万円=60万円
  • 納付する税金:100万円-60万円=40万円
  • 仕入税額控除の計算方法②個別対応方式

    個別対応方式の特徴

  • 事務処理は一番煩雑
  • 全額控除の次に税金上有利になることが多い
  • 全額控除を選択できない場合、個別対応方式を選ぶといちばん税金で有利になることが多い一方、事務処理は煩雑になります。

    個別対応方式は、課税仕入れを3つに分けて個別に仕入税額控除を計算します。

    課税売上に対応する仕入 全額を控除(100%)
    非課税売上に対応する仕入 控除できない(0円)
    課税売上と非課税売上に共通する仕入 課税売上割合の分だけ控除

     
    具体例で見ていきます。

    仕入税額控除【個別対応方式】の例
  • 課税売上:1,100万円(うち消費税100万円)
  • 仕入:550万円(うち消費税50万円)
  • 土地の売却手数料:55万円(うち消費税5万円)
  • 光熱費:110万円(うち消費税10万円)
  • 課税売上割合:50%
  • ※消費税率は一律10%とする。

    土地の売却手数料には消費税がかかりますが、土地の譲渡は非課税取引なので「非課税売上に対応する仕入」になり、仕入税額控除はできません。

    また、光熱費は課税売上と非課税売上に共通する仕入になるので、課税売上割合である50%が仕入税額控除できます。

    上記を踏まえて仕入税額控除を計算すると以下の通りです。

    仕入税額控除の金額

  • 仕入:50万円
  • 土地の売却手数料は非課税売上に対応するので仕入税額控除は0円
  • 光熱費:10万円×50%(課税売上割合)=5万円
  • したがって、消費税の納税額は以下の通りです。

    100万円×10%(売上にかかる消費税額)-(50万円+5万円)=45万円

    個別対応方式は一つ一つの取引に対して、「課税売上に対応する仕入かどうか」を判断しなければならないので、事務処理に手間がかかります。

    次に述べる一括比例配分方式と比較して、事務処理の手間・納税額の差を考慮して選択しましょう。

    仕入税額控除の計算方法③一括比例配分方式

    一括比例配分方式とは、「仕入にかかった全ての消費税×課税売上割合」で算出された金額を仕入税額控除の対象にします。

    個別対応方式を同じ具体例で説明していきます。

    仕入税額控除【個別対応方式】の例
  • 課税売上:1,100万円(うち消費税100万円)
  • 仕入:550万円(うち消費税50万円)
  • 土地の売却手数料:55万円(うち消費税5万円)
  • 光熱費:110万円(うち消費税10万円)
  • 課税売上割合:50%
  • ※消費税率は一律10%とする。

    仕入にかかった消費税額は以下の通りです。

    50万円+5万円+10万円=65万円

    「仕入にかかった全ての消費税×課税売上割合」で仕入税額控除の金額を求めるので、

    65万円(仕入れにかかった消費税額)×50%(課税売上割合)=32.5万円

    仕入税額控除の金額は32.5万円でした。

    納税額を求めると、

    100万円(売上にかかる消費税額)-32.5万円=67.5万円

    同じ例でも納税額は、個別対応方式だと45万円、一括比例配分方式だと67.5万円で差があることがお分かりいただけたと思います。

    課税仕入れの金額が大きく、課税売上割合が小さい事業者は一括比例配分方式だと損をする可能性があります。

    なお、一括比例配分方式を選択した場合には2年間は継続が必要です

    仕入税額控除の計算方法④簡易課税制度

    個別対応方式、一括比例配分方式はどちらも難しく感じた方も多いと思います。

    もっと簡易的な計算をしても良いよ、というのが「簡易課税制度」

    以下2つを満たせば、簡易課税制度を利用できます。

  • 課税期間の前々年又は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下
  • 「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出している
  • 簡易課税制度は中小企業の実務負担を減らす目的の制度で、課税売上が5000万円以下の企業のみ利用できます。

    簡易課税制度の仕入税額控除の金額の計算方法は、シンプルです。

    売上にかかる消費税額×みなし仕入率

    つまり、簡易課税制度では仕入れにかかった消費税額を計算する必要がありません。

    みなし仕入率は事業の内容によって以下の通り決められています。

    みなし仕入率

  • 第一種事業(卸売業)90%
  • 第二種事業(小売業)80%
  • 第三種事業(製造業等)70%
  • 第四種事業(その他の事業)60%
  • 第五種事業(サービス業等)50%
  • 第六種事業(不動産業)40%
  • 例えば、卸売業で売り上げにかかる消費税が100万円だった場合、仕入れ税額控除の額は90%なので90万円、納付する消費税額は10万円、と計算できます。

    消費税にかかる実務処理の手間は大幅に軽減されます。

    また、事業内容によっては簡易課税制度を利用した方が得な場合もあります。

    会社の取引状況や実務の手間を考慮して簡易課税制度を利用するかどうかを決めるべきでしょう。

    なお、簡易課税制度をいったん選択した場合、2年間は継続しなければなりません。

    簡易課税制度の詳しい内容は国税庁「No.6505 簡易課税制度」で確認してください。

    仕入税額控除のインボイス制度


    仕入税額控除の新しい論点として2023年10月1日から適用される「インボイス制度」(正式名:適格請求書発行事業者登録制度 )があります。

    インボイス制度では、税務署が認めた「適格請求書発行事業者」が発行した請求書でないと、仕入税額控除の対象にできません。

    「適格請求書発行事業者」になると、自動的に消費税を納付する義務のある「課税事業者」になります。

    現状では売上が1000万円に満たない場合には、消費税納税義務のない「免税事業者」となっていますが、免税事業者に支払った金額は仕入税額控除ができないことになり、免税事業者である中小企業やフリーランスなどへの発注が減る懸念があります。

    免税事業者同士の取引であれば関係ありませんが、課税事業者が免税事業者へ発注している場合には、「消費税課税事業者選択届出書」を出して消費税の課税事業者になってもらう必要があり、それから適格請求書発行事業者になるように要請する必要があります。

    インボイス制度についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

    インボイス制度 (方式)とは?個人事業主・フリーランスが注意すべきポイントを解説!

    仕入税額控除まとめ

    仕入税額控除とは、仕入れにかかった消費税を差し引いて消費税の納税額を計算すること。

    「課税売上割合」が95%以上で課税売上5億円未満の会社であれば全額控除、当てはまらなければ個別対応方式もしくは一括比例配分方式を選択して仕入税額控除の金額を計算することになります。

    売上5000万円以下の中小企業であれば簡易課税制度を利用することで実務処理を簡易化することも可能です。

    会社の取引内容と実務処理に応じて、適切な方法を選択しましょう。

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