仕訳FAQ

給与の勘定科目は?わかりにくい社会保険料・労働保険料も解説!

更新日:2023.05.22

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給与明細

経理、労務担当者にとって、給与まわりの仕訳をどのようにすればよいのか、は最大の悩み所といえます。
特に、前年度の仕訳を参照できない事情があったり、従業員の入社あるいは退社があったりすると大変です。

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この記事では、筆者の会計事務所での勤務経験を踏まえて、給与にかかわる取引の仕訳の基本と、社会保険料、労働保険料の計算方法、仕訳方法などについてわかりやすく解説します。

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給与の仕訳を発生時と支払時に分けて解説

給与の仕訳には、いくつか異なるパターンがありますが、要素となる仕訳は基本的に同じです。
給与には額面を従業員に支払うこと以外に、従業員に対しては交通費の支払いがあります。
また、給与から従業員負担分の源泉所得税と住民税、社会保険料、雇用保険料、を預かってそれぞれ別々に納めていく必要があります。
これらの取引を仕訳として会計処理していくことになります。
その他にも、異なる勘定科目を使ってもいい場合や、借方対貸方を1対1で行っていく単一仕訳を用いる方法などもありますので、そのような他の仕訳方法についても解説します。

給与発生時の仕訳

まず、当月分の給与の締め日に、給与を発生させる仕訳を説明します。
給与等の具体的な条件は、以下の給与明細に基づくものとします。
〇月分給与明細

支給額基本給 300,000通勤手当 15,000   支給合計 315,000
控除額健康保険 14,805厚生年金 27,450雇用保険 900所得税 5,140住民税 10,000控除合計 58,295


給与発生仕訳(振替伝票)

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
給与手当300,000未払金256,705〇月分 給料
旅費交通費15,000預り金14,805〇月分健康保険
  預り金27,450〇月分厚生年金
  立替金900〇月分雇用保険
  預り金5,140〇月分所得税
  預り金10,000〇月分住民税

 
借方に支給額を仕訳し、貸方に控除額と実際に支払う金額を仕訳して、振替伝票を用いるのが最も基本的な仕訳方法です。
雇用保険料は、1年に1回の支払時に会社がいったん立て替えているため、それを従業員から回収するという意味で「立替金」勘定を用いることが多いといえます。
1対1の仕訳しか切れない場合は、以下のように、最初の仕訳に実際に支払う金額を仕訳し、後の仕訳で控除の仕訳や振替の仕訳を追加していくという形式になります。

給与発生仕訳(1対1)

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
給与手当256,705未払金256,705〇月分 給料
給与手当14,805預り金14,805〇月分健康保険
給与手当27,450預り金27,450〇月分厚生年金
給与手当900立替金900〇月分雇用保険
給与手当5,140預り金5,140〇月分所得税
給与手当10,000預り金10,000〇月分住民税
旅費交通費15,000給与手当15,000〇月分通勤手当

給与支払時の仕訳

給与支払時は、前月の給与発生時の未払金を取り崩して、現金預金から払い出す仕訳をおこないます。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
未払金256,705現金預金256,705〇月分給料支払

ここでは、当月分に発生した給与を、翌月に支払うというパターンで説明しましたが、当月分給与を当月に支払う場合は、未払金を現金預金に置き換えるだけです。

源泉所得税の計算方法と支払時の仕訳

源泉所得税を手計算で計算する場合の計算方法を説明します。
財務省から「給与所得の源泉徴収税額表」というのが公表されています。毎月払いの給与であれば、これの月額表を使用します。
参考:給与所得の源泉徴収月額表

主たる給与(本業)の従業員であれば、甲欄を使用します。
甲欄では、社会保険料控除後の給与額のレンジと、扶養家族に人数によって、対応する源泉徴収税額が一覧となっていますので、その従業員に該当する部分の源泉徴収税額を参照することになります。
たとえば、上述の例:月額30万、社会保険料42,300円、雇用保険料900円、扶養人数1人という例であれば、縦軸の給与等金額は256,800円、横軸の扶養人数1人が交差する部分、5,140円となるわけです。
源泉徴収した所得税の支払時の仕訳は次のようになります。なお、通常は全従業員分をまとめて、納期の特例を利用していれば、半年分をまとめて納めることになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
預り金5,140現金預金5,140〇月分源泉所得税支払

源泉徴収税額』について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

住民税支払時の仕訳

住民税は、前年度の所得に応じて、住民票のある各市区町村が算定してきます。
これを12等分して、通常、6月から年度が切り替わり、給与から天引きし翌月10日までに納めます。
住民税10,000円を各市区町村に納める時の仕訳は次の通りです。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
預り金10,000現金預金10,000〇月分住民税支払
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社会保険料、労働保険料の従業員負担の計算と仕訳

上述では、社会保険料と労働保険料は計算済のものとして、給与明細から給与発生時と給与支払時の仕訳を説明しました。
ここからは、社会保険料と労働保険料の従業員負担分を手計算で計算する方法と、それらを従業員から徴収して各機関に納めるときの仕訳について解説します。

従業員負担の社会保険料の計算方法

社会保険料は、通常、健康保険、厚生年金保険、児童手当拠出金、に分けられます。
社会保険料には、標準報酬額という概念があり、原則は、毎年4月~6月の報酬額を下に日本年金機構に届け出ることによって決定されます(その他、随時改定などもあります)。
健康保険料は、全国健康保険協会(通称、協会けんぽ)が地域ごとに料率を決めており、標準報酬額にその料率を乗じて計算します。厚生年金保険料の料率は、日本年金機構によって決められており、原則、全国一律です。
健康保険料と厚生年金保険料を、会社と本人で半分ずつ負担しますが、各標準報酬額ごとの従業員の本人負担額は、料率表に一覧となっていますので、原則はこれを参照します。

参考:令和2年4月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料率表(東京)
児童手当拠出金は、全額会社負担となりますので、年金機構が決定してきた金額をそのまま納めるだけです。従業員から徴収してはいけません。

従業員負担の労働保険料の計算方法

労働保険は、労災保険と雇用保険とに分かれます。
労災保険は、全額会社負担となりますので、従業員負担分の計算はありません。
従業員負担分の雇用保険料は、事業の種類ごとに料率が決められており、給与の額面額+通勤手当の合計額に、料率を乗じて計算します。
令和2年4月現在の一般の事業の雇用保険料率は、0.3%となっています。

参考:令和2年度の雇用保険料率

社会保険料発生時と支払時の仕訳

社会保険料は、当月末日に在籍している従業員の分を翌月の末日までに納めることになっています。
そこで、一般的には、当月末日に給与の支払いとは別個に、社会保険料の未払計上をおこない、翌月の社会保険料の支払時に、従業員からの預かり分と併せて取り崩して支払うというのが原則です。
なお、ここでは、従業員から従業員負担分の社会保険料を徴収する時に、「預り金」勘定で仕訳したことを前提としています。例外的ではありますが、「法定福利費」のマイナス勘定で従業員負担分を仕訳し、社会保険料の発生時に、会社負担分と従業員負担分の合計を計上する仕訳方法もあります。この場合は、支払時には「未払金」を取り崩す仕訳のみで足りることになり、仕訳としてはスッキリします。

社会保険料発生時の仕訳

当月末日に、標準報酬額30万円の従業員の会社負担分の社会保険料42,255円が発生した時の仕訳は次のようになります。
従業員負担分まで未払いを計上しないよう、注意しましょう。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
法定福利費42,255未払金42,255〇月分社会保険料

社会保険料支払時の仕訳

翌月に、年金機構に対して、標準報酬額30万円の従業員の社会保険料84,510円を支払い、従業員から預かった負担分42,255円を取り崩した時の仕訳は次のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
未払金42,255現金預金84,510〇月分社会保険料
預り金42,255  〇月分社会保険料・従業員負担

なお、従業員が退職する時は、社会保険料の支払いが1カ月遅れるため、最後の給与支払時に2か月分の社会保険料を預かり徴収することになります。
社会保険料の支払時に、預り金の割合がおかしいと思ったら、従業員からの徴収不足などがないか、確認しましょう。

労働保険料を支払った時の仕訳

労働保険料は、毎年7月に、翌期分を前払いし、既に支払った分を精算する仕組みになっています。このため、厳密には、翌期以降の前払費用分を毎月取り崩して「法定福利費」として計上し、7月に精算分の処理をするのが正しいといえます。
しかし、実務上は、このような会計処理は複雑に過ぎるため、以下のような処理がとられることが多いといえます。
翌期前払分と精算分を含め、労働保険料43,200円を支払い、従業員負担分10,800円を立て替えた時の仕訳は次のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
法定福利費32,400現金預金43,200労働保険料
立替金10,800  雇用保険料・従業員負担分

上述の給与発生時、支払時の仕訳で確認したように、毎月、従業員から雇用保険料を徴収した時に、この立替金を取り崩していくことになります。

まとめ

以上、給与の仕訳と、社会保険、労働保険の会計処理、仕訳がおわかりいただけたかと思います。
特に、社会保険、労働保険は、最低限従業員負担分と会社負担分を分けて処理をしないと、決算の数字に影響が出てくることになります。
また、仕訳方法には複数の選択肢があるので、自社に適した効率のよい方法を選択したいものです。

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