ソフトウェアの会計処理は難しい?パターン別の処理方法を徹底解説!

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    会社の業務に欠かせないソフトウェアですが、その会計処理の方法には注意が必要です。最近は簿記の試験範囲にもソフトウェアの問題が出てきますから、それだけ実務でも必要とされているのでしょう。

    ソフトウェアを購入した場合は一括費用処理や無形固定資産で計上し減価償却します。販売している場合も開発したソフトウェアの製品価値を減価償却する必要があります。

    自社の仕様でソフトウェア開発を発注している場合は工事契約に関する会計基準を適用しますので、発注側も受注側も処理に注意しなければなりません。また、2021年4月からは会計基準も新たになります。

    この記事では経理担当として基幹システムをはじめ各種のソフトウェアの会計処理に携わった筆者がソフトウェアの会計処理のポイントと仕訳を詳しく解説します。

    ソフトウェアとは

    会計でいう「ソフトウェア」とはコンピュータ・ソフトウェアをいい次の2つを指します。

    ・コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム

    ・システム仕様書、フローチャート等の関連文書。

    IT用語の示す範囲とは少し違いますので注意しましょう。

    具体的にはパッケージソフトをイメージするとわかりやすいと思います。他にも自社仕様の会計システム・人事情報システム・原価管理システム・積算システム・在庫管理システムなどが該当します。

    自社製品としてシステムを販売する会社では、複製して製品を量産するもととなる「製品マスター」もソフトウェアとして扱います。

    市販ソフトウェアを購入した場合の処理

    市販のソフトウェアを購入したときの処理には、固定資産として計上する場合と費用処理する場合の2種類があります。それぞれの処理について確認しましょう。

    (1) 無形固定資産に計上

    ソフトウェアで20万円以上のものは固定資産として「無形固定資産」に計上して減価償却します。購入代金以外の初期設定費用や工事代金も取得価格として減価償却の対象です。減価償却の方法は定額法を用いて5年以内で償却します。

    【ソフトウェアを購入して固定資産に計上した場合の仕訳】

    借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
    ソフトウェア(無形固定資産) 600,000 預金 600,000

     

    【間接法でソフトウェアを5年で償却する場合の毎月の仕訳】

    借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
    ソフトウェア償却 10,000 減価償却累計額 10,000

     

    中小企業は「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」で平成18年4月1日から令和2年3月31日までの間に取得した30万円未満の固定資産には特例があります。

    特例では一定の要件のもとに、固定資産の取得価額の合計額が300万円に達するまで全額費用処理することができます。該当する場合は固定資産に計上する必要はありませんので確認して処理しましょう。

    政府の進める「IT導入補助金」でソフトウェアを購入した場合は圧縮記帳することができます。その場合は取得価格が圧縮記帳後の金額になりますので注意しましょう。

    補助金を受けた固定資産の圧縮記帳と減価償却についてはこちらの「【図解】減価償却累計額とは?圧縮記帳の減価償却から貸借対照表の表示まで徹底解説!」で詳しく解説しています。

    【図解】減価償却累計額とは?圧縮記帳の減価償却から貸借対照表の表示まで徹底解説!

    (2) 一括費用処理

    ソフトウェアで10万円以上20万未満の少額であれば一括償却資産として3年の償却か購入時の即時償却(中小企業の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)を選択できます。10万円未満であれば購入時に全額費用処理できます。

    【10万円未満のソフトウェア代金を全額費用処理する場合の仕訳】

    借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
    消耗備品 80,000 預金 80,000

     

    市販ソフトのバージョンアップは維持管理費や修繕費など会社ごとの勘定科目設定に従い処理しましょう。

    クラウド型のソフトウェアを利用する場合

    最近は市販のソフトウェアもパッケージ型とクラウド型があります。クラウド型のソフトを導入した場合は、パッケージ型と違い初期の購入代金が発生しません。月々の利用料を支払手数料や維持管理費で処理します。

    ただし、クラウド型のソフトウェアを1年以上の長期間にわたって利用する予定で、初期設定費用やカスタマイズ費用などが一定額を超えると無形固定資産に計上しますので注意しましょう。

    利用期間を定めた契約をしていれば、その期間が償却期間となるのもポイントです。税務上も繰延資産として処理しますので覚えておきましょう。

    ソフトウェアの収益認識

    ソフトウェアの収益認識は通常の販売とは少し違います。基本的な考え方をご説明します。

    (1) 市販品のソフトウェア

    市販品のソフトウェアは著作権法の「プログラムの著作物」にあたります。市販ソフトウェアを販売した場合はパッケージ型であれ、クラウド型であれ、契約により使用権を購入者に与える使用許諾契約となります。使用許諾契約(ライスセンス契約)の収益の認識はユーザーが使用できる状態になった時点です。

    契約することでソフトウェアの使用許諾権であるソフトウェアのライセンス使用料を得るシステムと考えるとわかりやすいかもしませんね。

    パッケージ型のソフトウェアを代理店を通して販売している場合は委託販売として扱います。代理店が販売した日をもって収益認識します。代理店への納入日ではないので注意しましょう。

    委託した状態で決算日をむかえる場合は仕切精算書などで決算時点の販売分を当期の売上収益として計上します。

    参考:企業会計基準委員会|ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い

    (2) 受注制作のソフトウェア

    受注制作のソフトウェアは1年を超える工期の案件も多く、要件に該当するものは請負による「工事契約に関する会計基準」を適用します。会計基準では「工事完成基準」と「工事進行基準」のどちらかを成果の確実性に基づき判断します。

    簡単にいうと、収益と原価の総額と決算時点の進捗度を見積ることができれば工事進行基準、できなければ工事完成基準となります。

    収益認識により入金を前受金として扱うことがあります。工事完成基準なら引渡前の入金は前受金として処理しますので注意しましょう。

    受注制作のソフトウェアは2021年4月から新収益認識基準が適用されます。新しい収益認識基準では成果の確実性ではなく、「一定の期間にわたり履行義務を充足するかどうか」が判断基準となりますので覚えておきましょう。

    会計基準の変更に先駆けてなのか、最近の契約では細かな工程ごとの契約書を目にするようになりました。

    ソフトウェアを開発した場合の処理

    自社でソフトウェアを開発した場合は、その目的により処理がことなります。大きくわけて自社で使用するものと外部へ提供するものとで区分します。外部への提供には汎用品としての販売と受注制作があます。

    (1) 自社で使うソフトウェア

    社内の業務改善を目的として自社でソフトウェアを開発した場合は「収益につながるか」がポイントとなります。収益性のあるなしは費用削減も含みます。収益に寄与するか否かで会計と税務の処理が変わってきます。

    「収益性が確実」であれば会計上は資産と認識します。税務では「収益性が確実でない」なら資産計上しないことができますから判断には注意しましょう。

    自社制作のソフトウェアの取得価格は開発にかかった人件費や経費と考えます。人件費は工数や時間と人件費単価から積算するなど合理的な方法で按分計算します。

    (2) 販売する目的のソフトウェア

    市販で販売する目的のソフトウェアの制作では研究開発にかかる部分は研究開発費、研究開発が終了してソフトウェア製品の制作スタートから製品が完成するまでの費用は無形固定資産として計上します。ただし、機能の改良は「著しい改良」であれば研究開発費です。

    研究開発費には開発にかかる人件費や他社製品を購入して機能を検討する場合の他社製品の代金などが該当します。

    また、研究開発の終了時点は日本公認会計士協会の「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」では複写して販売するための製品マスターが完成した時点とされています。

    ソフトウェア製品が完成し「ソフトウェア」として資産計上した後は、製品の見込販売数量や見込販売収益を見積り、3年以内の償却期間で減価償却していきます。

    ソフトウェアの資産計上や減価償却についてはこちらの「ソフトウェアの減価償却方法の計算方法を分かりやすく解説!」で詳しく説明しています。

    ソフトウェアの減価償却方法の計算方法を分かりやすく解説!

    (3) 受注制作のソフトウェア

    受注制作のソフトウェアを開発している場合は、工事契約会計基準によって処理します。受注制作している案件ごとに工番(プロジェクト番号)を振り、個別に原価を管理します。

    ソフトウェア開発では契約時の仕様が詳細に詰められていない場合もあり、制作途中での仕様変更が頻繁に発生します。対応するために人件費が予算オーバーして赤字となることもあります。その場合は見込まれる損失額を「受注損失引当金」として原価に計上します。

    【受注損失引当金を計上する場合の仕訳】

    借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
    原価(受注損失引当金繰入) 500,000 受注損失引当金 500,000

     

    受注損失引当金はソフトウェアが完成し損失が確定した時点で取り崩します。制作が会計期間をまたぐ決算では貸借対照表の流動負債として記載しますので、貸借対照表に受注損失引当金の記載があれば赤字プロジェクトを抱えているとわかりますよ。

    ソフトウェア仮勘定とは?

    ソフトウェア仮勘定は制作途中のソフトウェアにかかる費用を計上するための無形固定資産の仮勘定です。建設仮勘定のソフトウェア版と考えるとイメージしやすいと思います。

    仮勘定ですので減価償却はしません。ソフトウェアが完成して仮勘定から「ソフトウェア」の本勘定へ振替した時点から減価償却が始まります。

    【ソフトウェア仮勘定を使って集計している場合の支払いの仕訳例】

    借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
    ソフトウェア仮勘定 1,000,000 預金 1,000,000

     

    【ソフトウェア仮勘定から本勘定へ振替する仕訳例】

    借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
    ソフトウェア(無形固定資産) 1,000,000 ソフトウェア仮勘定 1,000,000

     

    ソフトウェアの制作は長期にわたることが多く会計期間をまたぐこともあります。その場合の決算もソフトウェア仮勘定として無形固定資産で処理し、貸借対照表ではソフトウェアの本勘定の下に記載しますので覚えておくとよいと思います。

    ソフトウェア仮勘定貸借対照表

    引用:三井不動産リアルティ|貸借対照表

    まとめ

    会社の業務では多くのソフトウェアを使用します。ソフトウェアは目的別に会計処理がことなるため奥が深く、いくつもの判断基準があり迷うこともしばしばです。

    金額的に大きなものもあり決算数字にも影響しますので注意して処理しましょう。