仕訳FAQ

建設仮勘定の仕訳方法|減価償却や消費税の処理方法を解説

更新日:2023.05.17

この記事は約 3 分で読めます。

建設仮勘定とは、まだ完成していない固定資産にかかったお金を計上しておく勘定科目のこと。
建設仮勘定の仕訳は、「固定資産のためにお金を払ったとき」「固定資産が完成して引き渡されたとき」の2つのタイミングに行います。
建設仮勘定の仕訳

【固定資産のためにお金を払ったとき】

借方貸方
建設仮勘定XXX現金XXX

【固定資産が完成して引き渡されたとき】

借方貸方
建物XXX建設仮勘定XXX

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この記事では、建設仮勘定の仕訳と考え方について、具体例をつかってわかりやすく解説します。
筆者は上場企業で固定資産業務を担当していました。実務の注意点も踏まえてまとめましたので、参考にしてください。

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建設仮勘定とは?


建設仮勘定とは、まだ完成していない固定資産にかかった金額を計上しておく勘定科目です。
建設仮勘定の概要と仕訳の流れをわかりやすく解説していきます。

建設仮勘定の考え方の基本

建設仮勘定 仕訳
建設仮勘定の流れを図にすると上のようになります。
建設仮勘定は、固定資産を作るのにかかったお金をいったん計上しておく勘定科目です。だから建設「仮」勘定なのです。
固定資産が完成して引き渡しを受けたら、固定資産の勘定科目に振り替えます。
工場やビルなどの建物、大型のボイラーなどは出来上がるまでに時間もお金もかかりますよね。
資材を発注しないといけないので、工事が始まる前に手付金を払うことも多いです。
このようにある固定資産を作るのにいくらかかったのかを帳簿に付けておくために、建設仮勘定という科目を使います。

建設仮勘定と固定資産の考え方

「お金を払うたびに固定資産にしてはいけないの?」と感じるかもしれません。
実は会計上では、実際に使える状態になって(=事業の用に供する)から、固定資産として記載できるようになる、という決まりがあります。
建設仮勘定から固定資産に振り替えることを、経理では「固定資産を取得する」といいます。
固定資産を取得すると減価償却が始まって徐々に費用になっていきます。
なお、建設仮勘定・固定資産とも資産の勘定科目なので、貸借対照表の資産の欄に載ることになります。

建設仮勘定の仕訳の流れ

冒頭で紹介した通り、建設仮勘定の仕訳は2つのタイミングで行います。

  • 固定資産のためにお金を払ったとき
  • 固定資産が完成して引き渡されたとき

実際に仕分けにすると次の通り。

建設仮勘定の仕訳
【固定資産のためにお金を払ったとき】

借方貸方
建設仮勘定XXX現金XXX

【固定資産が完成して引き渡されたとき】

借方貸方
建物XXX建設仮勘定XXX

お金を払うたびにいったん、建設仮勘定に置いておいて、その固定資産にいくらかかったのかを把握します。
固定資産が完成したら、金額が確定して固定資産を取得して、耐用年数に応じて減価償却していきます。
耐用年数と減価償却について知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

建設仮勘定の仕訳の例


建設仮勘定の仕訳を以下の具体例でみていきます。

  • 工場の建設のため、工事業者に500万円の手付金を支払った
  • 建設にかかる追加の費用として300万円を支払った
  • 工場が完成し、残りの200万円を支払った

建設仮勘定の発生から固定資産の取得までの、仕訳の流れをつかんでください。
1.工場の建設のため、工事業者に500万円の手付金を支払った

借方貸方
建設仮勘定500現金500

建設仮勘定は資産の勘定科目なので借方、相手勘定はお金を支払ったので現金や預金です。
注意点は、前払金や前渡金などの勘定科目で処理しないこと。
固定資産のために払ったお金は「建設仮勘定」で仕訳をします。
前渡金・前払金については以下の記事で解説しています。


2.建設にかかる追加の費用として300万円を支払った

借方貸方
建設仮勘定200現金200

工事が始まって、さらに追加でお金を支払った時も建設仮勘定で仕訳をします。
経理の実務では、工事が複数同時に行われることも多いです。どの建設仮勘定がどの工事かがわかるように、社内で区別できるように通し番号をつけるなどして管理します。

3.工場が完成し、残りの200万円を支払った

借方貸方
建物1,000建設仮勘定800
現金200

工場が完成して引き渡した時点で、「事業の用に供する」状態になります。
これまで計上した建設仮勘定と、引き渡し時点でしはらった金額を併せて、固定資産の勘定科目「建物」として取得します。

建設仮勘定の注意点

建設仮勘定の概要と仕訳について解説してきました。
ここからは、建設仮勘定について誤りやすい点、知っておきたい点をまとめています。

建設仮勘定は減価償却できない

固定資産になる前の建設仮勘定は、減価償却の対象外です。
会計上には「費用収益対応の原則」という考え方があり、収益に対応する費用を同時期に計上するという重要な考え方があります。
建設仮勘定はまだ使い始める前の未完成の固定資産。例えば、機械や工場ならまだ稼働してないから商品を作れないので収益を生み出していませんよね。
「費用収益対応の原則」から考えても、固定資産は使い始めてから費用化する(減価償却費を計上する)のが正しいといえます。

建設仮勘定で消費税はどうやって処理する?

建設仮勘定に計上した金額においても、物の引き渡しや役務の提供があった日に仕入税額控除が可能です。
国税庁のホームページには次の通り記載があります。

消費税法においては、建設仮勘定に計上されている金額であっても、原則として物の引渡しや役務の提供があった日の課税期間において課税仕入れに対する税額の控除を行うことになりますから、当該設計料に係る役務の提供や資材の購入等の課税仕入れについては、その課税仕入れを行った日の属する課税期間において仕入税額控除を行うことになります。

引用:国税庁「No.6483 建設仮勘定の仕入税額控除の時期

なお、固定資産が完成したタイミングでまとめて仕入税額控除をすることも認められています。
経理の処理としてはこちらのほうが楽ですが、できるだけ節税するという観点から言えば、仕入れの都度、仕入税額控除を行ったほうが良いです。

建設仮勘定は固定資産税がかかる?

建設仮勘定は固定資産税(償却資産税とも呼ばれます)の対象外です。
固定資産税とは、市町村に支払う税金で、1月1日時点に持っている固定資産に対して課税されます。
まだ未完成の建設仮勘定は対象外なので、固定資産税もかかりません。
ただし、すでに完成しているのにまだ使っていないから建設仮勘定のままになっている、という場合には税務上は固定資産とみなされて固定資産税の対象になるので注意しましょう。

建設仮勘定の減損とは?

建設仮勘定は減損の対象になります。
たとえば、ある商品を製造するための工場を建設していたものの、商品が売れなくなり当初予定していた収益が望めない場合などに、工場を建てるために計上していた建設仮勘定を減損します。
減損の兆候には次のものがあげられます。

  • 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合
  • 使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合
  • 経営環境の著しい悪化の場合
  • 市場価格の著しい下落の場合

企業会計基準適用指針第号6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」より
建設仮勘定を減損するかどうかは慎重な判断が必要なので、会計士に相談しましょう。

建設仮勘定の仕訳|まとめ

建設仮勘定の仕訳の基本は次の通りです。
【固定資産のためにお金を払ったとき】

借方貸方
建設仮勘定XXX現金XXX

【固定資産が完成して引き渡されたとき】

借方貸方
建物XXX建設仮勘定XXX

建設仮勘定はまだ完成していない固定資産にかかったお金を集めておく勘定科目です。
固定資産が完成したら、固定資産に振替えて減価償却していきます。
建設仮勘定は固定資産の経理業務では欠かせない考え方です。
この機会に整理しておいてくださいね。

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