資産除去債務とは?仕訳のやり方は?初心者向けにわかりやすい言葉で解説!

資産除去債務とは、有形固定資産を取得するときに、除去するときに見込まれる費用を見積もって計上しておく負債のことです。

例えば、土地を借りて建物を建てたけど契約が終わったら更地にする、という場合には建物の撤去費用などを資産除去債務にすることになります。

この記事では以下について解説します。

この記事でわかること

  • 資産除去債務の基本の考え方
  • 資産除去債務の仕訳を具体例で解説
  • 資産除去債務の税務上の取り扱い
  • 資産除去債務は簿記1級レベルなので難易度としては高いですが、具体例を使って説明していくのでイメージしやすく紹介していきます。

    筆者は上場企業で固定資産担当をしていました。

    「資産除去債務」って何?という人向けに簡単な言葉で解説していくので、参考にしてみてくださいね。

    資産除去債務とは?考え方をわかりやすく整理


    資産除去債務とは、一言でいえば固定資産が使えなくなったときにかかる費用を前もって計上しておく負債のこと。

    資産除去債務、という名前を聞くと難しそうですが、具体例でイメージしやすく解説していきます。

    資産除去債務とは?わかりやすく解説!

    資産除去債務は、固定資産が耐用年数が過ぎたとき、撤去費用などをあらかじめ負債に計上しておく、という考え方がもとになっています。したがって、資産除去債務は固定資産を取得したときに生じます。

    資産除去債務が発生する具体例を見てみましょう。

    資産除去債務が発生する具体例
    • 飲食店の経営をしている会社が借りている店舗の原状回復費用
    • 工場用の土地を借りているとき、土壌汚染の調査・対応の費用
    • 土地を借りて建物を建設しているとき、契約終了後に更地に戻すための撤去費用
    例のように、固定資産を取得したときに、その固定資産が使えなくなったらかかるだろうな、と予想できる費用を負債側に「資産除去債務」として計上しています。

    企業会計基準では、資産除去債務の定義を次の通り定めています。

    「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれ
    に準ずるものをいう。この場合の法律上の義務及びそれに準ずるものには、有形固定資産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれる。

    企業会計基準第 18 号「資産除去債務に関する会計基準」より

    資産除去債務が取り入れられたのはなぜ?【IFRSが理由】

    資産除去債務、という考え方が日本の会計基準で適用されるようになったのは平成22年(2010年)で、それまでは資産除去債務を計上することは行っていませんでした。

    なぜ、資産除去債務を計上するようになったかというと、国際会計基準(IFRS)との整合性をとるためです。

    日本の会計基準と国際的な会計基準の差をなくして、世界中の会社の決算資料を比較しやすくしよう、というのが近年の流れ。

    その流れの一つとして、資産除去債務が日本の会計基準に導入された、という背景があります。

    資産除去債務の仕訳を具体例で解説

    資産除去債務の考え方と導入の背景を紹介してきました。

    ここからは、仕訳を具体例を使って解説します。例としてわかりやすくするために、小さい金額にしています。

    資産除去債務の仕訳【具体例】

    【条件】

    • 固定資産は機械で、金額10,000円、耐用年数5年
    • 定額法で減価償却する
    • 資産除去債務は1,000円
    • 割引率は3%

    割引率とは、将来の金額の現在の価値を求めるために使います。

    上記の例のように、5年後に機械が使えなくなって撤去費用(=資産除去債務)が1,000円かかる見込み。5年後の1,000円の現在価値は以下のように計算します。

    1,000円÷(1.03)5=863円

    したがって、割引率が3%のとき、5年後の1,000円の現在価値は863円です。資産除去債務は、この現在価値をつかって計上します。

    1. 固定資産を購入し、使い始めた。
    2. 借方 貸方
      機械 10,863 預金 10,000
      資産除去債務 863

       

      資産除去債務の相手勘定は固定資産です。固定資産を貸借対照表に計上するタイミングで資産除去債務も一緒に計上します。

      資産除去債務の金額は、先ほど述べた通り「5年後の1,000円の現在価値」を割引率を使って計算して計上します。

      資産除去債務の計算
      1,000円÷(1.03)5=863円

    3. 決算を迎えた
    4. 借方 貸方
      減価償却費 2173 減価償却累計額 2173
      利息費用 26 資産除去債務 26

       

      計算のポイントは2つです。

      計算のポイント

      • 減価償却費の計算は資産除去債務の金額を含めて行うこと。
      • 資産除去債務の時間が経過した分の調整額を利息費用に計上すること

      計算式は次の通り。

      減価償却費の計算
      10,863円÷5年=2,173円

      資産除去債務の調整額の計算
      863円×3%=26円

      調整額の相手勘定は「利息費用」で、損益計算書上の「販売費及び一般管理費」に入ることになります。

      2年目の決算の仕訳をみてみましょう。

    5. 2年目の決算を迎えた
    6. 借方 貸方
      減価償却費 2173 減価償却累計額 2173
      利息費用 27 資産除去債務 27

       

      定額法なので減価償却費は一定ですが、利息費用の計算は以下のように行います。

      資産除去債務の調整額の計算
      (863円+26円)×3%=27円

      したがって、5年目までの資産除去債務の調整額の計算は以下の表のようになります。

      資産除去債務の累計額と調整額

      計上時 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
      資産除去債務の累計額 863 889 916 943 971 1,000
      調整額 26 27 27 28 29 30

       

    7. 耐用年数の5年が経ち、機械を除去した
    8. 機械の撤去費用に1,020円かかったとする。

      借方 貸方
      資産除去債務 1,000 預金 1,020
      履行差額 20

       

      撤去費用を1,000円として見積もって、資産除去債務を計上してきましたが、実際に支払う金額とは差異が出ます。

      差額は「履行差額」として費用(もしくは収益)に計上します。

    履行差額という勘定科目は聞きなれない人も多いと思います。資産除去債務で使われる特殊な勘定科目なので、頭の片隅に置いておきましょう。

    資産除去債務と税金の関係【税効果会計の対象です】


    資産除去債務と法人税・消費税の関係について解説します。

    資産除去債務は、まだ実際には費用が発生していない、将来の費用の見積もりです。

    税務上の考え方の基本である「債務確定主義」から見て、損金に計上できません。

    法人税法では資産除去債務の分の減価償却費や調整額は損金不算入です

    上記で述べた例の通り、会計上は資産除去債務の金額を含めて減価償却費を計算しました。また、資産除去債務の時間の経過に伴って調整額を利息費用に計上しました。

    これらの費用はどちらも、税務上は認められていません。税務上は「資産除去債務」という考え方が存在しないからです。

    したがって、会計上と税務上の差異が生じるので、資産除去債務は税効果会計の対象となります。

    資産除去債務は消費税はどうなる?

    資産除去債務は課税取引ではありません。将来、実際に固定資産を撤去するために業者に依頼したときには消費税がかかり、その際には仮払消費税を計上します。

    資産除去債務を計上するとき(=固定資産を取得したとき)にはまだ消費税は発生していません。

    したがって、実務上は固定資産本体の金額は課税、資産除去債務の金額には消費税がかからない、と会計システムに入力する必要があります。

    資産除去債務の仕訳|まとめ

    オフィス

    資産除去債務とは、固定資産の取得の時に前もってわかる撤去費用などを計上しておく負債のことで、固定資産の取得、建設、開発などによって生じます。

    計上する金額を割引率から見積もったり、税効果会計の対象となっていたりと難易度が高いです。

    実務上で計上するときには顧問税理士や会計士に相談しながら、業務を進めていきましょう。

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