スキャナ保存制度とは?電子帳簿保存法に関連する手続・運用方法を徹底解説!!
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近年話題の『電子帳簿保存法』に密接に関わる、『スキャナ保存』。実は法改正が行われるたびにスキャナ保存制度の要件は緩和されているのは、ご存知でしたか?
2005年のスタート時には要件のハードルが高く導入に二の足を踏んだ企業も、改正の要件緩和を機に導入したり、導入を検討されているのではないでしょうか。
スキャナ保存制度はメリットもありますが、デメリットもあります。導入してみて経理部の業務負担が軽減されたという企業ばかりではないようです。国税庁の問答集でも要件や運用開始後のデータのあつかいについて問いが多く寄せられています。
この記事では経理を担当する筆者がスキャナ保存制度の細かな要件と制度を利用するための手続や運用方法を解説します。是非参考にしてみてください。
スキャナ保存制度とは
スキャナ保存制度は電子帳簿保存法のなかのスキャナ保存についての制度です。税法で保存が義務付けられている国税関係書類を一定要件のもとスキャナ保存するものです。
書類をスキャナ保存していれば仕入税額控除も認められます。
紙の原本を保存する必要がありませんので文書保存の負担を軽減することができます。
スキャナ保存制度は2005年から始まりました。当初は要件が厳しく導入する企業も多くありませんでした。その後2015年、2016年、2019年、2020年に改正され要件が大きく緩和されて利用しやすくなっています。
2019年の改正では要件が大きく見直されました。
今までスキャナ保存の導入を検討していたが、運用を考えると難しいと判断していた企業のなかにも再検討して導入し始めた企業もあるようです。要件を確認して再検討するのもよいかもしれません。
なお電子帳簿保存法は2020年10月に改正されています。『電子帳簿保存法の最新改正情報』についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
スキャナ保存制度の要件とタイムスタンプ
スキャナ保存制度は一定の要件を満たさなければなりません。細かな要件も満たさなければなりませんのでモレのないように確認して運用しましょう。
スキャナ保存の要件のスキャナは法改正のたびに要件がかわっています。申請時期により次の表のように対応がことなりますので注意しましょう。
タイムスタンプについても確認しておきましょう。
タイムスタンプは、ある時点でその電子データが確かに存在していたことやスタンプ後に不正な改ざんがされていないことを証明するものです。スキャナ保存した電子データにタイムスタンプを付与することで書類の存在を証明します。
タイムスタンプにつては2020年10月の法改正でも要件が緩和されています。自社でスタンプしたもの以外に取引相手のタイムスタンプも認められました。
例えば請求書であれば、発行者のタイムススタンプがあれば受取側のタイムスタンプは不要となったのです。
『タイムスタンプ』についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
スキャナ保存の対象書類
スキャナ保存の対象となる書類は細かく定められています。対象は、規則第3条第3項に規定する書類以外の国税関係書類であって、法第4条第3項に基づいて所轄税務署長等が承認したものとされています。
売上伝票などの伝票類は保存すべき国税関係書類に該当しないのでスキャナ保存の適用はありません。
対象書類のなかにも重要書類と一般書類がありますので確認しておきましょう。
【スキャナ保存の対象】
○重要書類(法第4条第3項に規定する国税関係書類のうち、規則第3条第6項に規定する国税庁長官が定める書類以外の書類)
○一般書類(規則第3条第6項に規定する国税庁長官が定める書類)
【スキャナ保存の対象外】
スキャナ保存のメリットとデメリット
スキャナ保存にはメリットとデメリットがあります。導入時の負担や作業量だけでなく、コストや社内整備の観点からも検討しなければなりません。
(1) スキャナ保存のメリット
スキャナ保存すれば経理部門の管理負担が減ります。書類を保管する場所も不要です。国税関係の書類は保存期間が7年のものが多く、保存する書類も多岐にわたるので膨大な量となります。企業によっては社内の書庫では保存しきれず外部に書庫を借りていることもあります。保管場所を確保する費用負担も軽いものではありませんので、スキャナ保存することで大きなコストカットができます。
また、スキャナ保存することで社内の各部門のデータを共有しやすくなり、経理部門がみている元帳などの帳票データと証憑のスキャナデータを確認しやすくなります。紙で保存しているときよりも、はるかに検索性もあがり突合作業の効率もアップします。
会計監査や税務調査もスピーディに対応できるようになります。
(2) スキャナ保存のデメリット
スキャナ保存制度の要件を満たすためにはデータの真実性を担保するために機器を用意しなければなりませんし、14インチ以上のディスプレイを備えたパソコンも必要です。
原本をスキャナするためには人件費がかかります。大規模な事業所では、ほぼ専属のようになっている担当がいる場合もあります。
スキャナ保存制度を導入するには運用ルールを徹底しなければなりませんから、業務フローを作成して社内に周知して管理していかなければなりません。
なかには紙の方が管理しやすいという人もいますから、社内の協力体制を築くには営業や現業サイドのメリットを説明して納得してもらわなければなりません。制度が浸透せず中途半端なものにならないように事前準備は必須です。
スタート時には社内も混乱しますから経理担当者の負担も大きなものとなります。
スキャナ保存制度の申請手続
スキャナ保存制度を利用するには事前に所轄の税務署に届出して承認を受けなければなりません。申請手続について確認しましょう。
【提出書類】
・国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書
・システムの概要や操作説明書などを添付
【申請期間】
・スキャナ保存を開始する3カ月前の日
引用:国税庁|記載例
○スキャナ保存制度の申請用紙はこちらの「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書」からダウンロードできます。
定期検査と原本破棄のタイミング
スキャナ保存したからといって書類の原本を即時に破棄してはいけません。スキャナ保存制度では第三者による定期検査終了後にしか破棄が認められていないからです。
定期検査は2015年9月30日以後に行われた承認申請からの要件となりました。当初は定期検査の頻度は年に1回以上とされてきましたが、2019年の改正で本店など特に重要な事業所については1年に1回以上、その他の事業所についてはおおむね5年となりました。
*** 定期的な検査に関する解釈の見直し ***
スキャナ保存制度においては、受領から入力までの事務処理の内容を定期的に検査することとしており、その頻度については、全ての事業所等を対象として1年に1回以上行うこととしていましたが、事業規模に応じた柔軟な対応を可能とするため、おおむね5年のうちに全ての事業所等の検査を行う場合についても要件を充足しているものと取り扱うこととします。
また、次に該当する場合は、定期検査終了後も電磁的記録と合わせて国税関係書類の書面を保存しなければなりませんので注意しましょう。
・入力期間を経過してしまった場合
・備え付けられているプリンタの最大出力より大きい書類を読み取った場合
・検査で不備があった場合
スキャナ保存の注意点
スキャナ保存制度で原本を破棄するためには要件をみたさなければなりません。紙の原本を破棄できなければスキャナ保存制度のメリットを享受できませんので、スキャナ保存するときの注意点を確認しましょう。
(1) 入力期間にスキャナ保存できなかった場合
スキャナ保存制度では定められた入力期間にスキャナ保存する必要があります。入力期間を経過してしまった書類はその他の保存要件に沿って処理したうえで、紙のまま保存することになります。
入力期間を経過したことで、スキャナ保存した書類が、要件を満たしていない電磁的記録となるためです。
ただし、大規模な停電やシステム障害等が発生した場合のように特別な理由がある場合は、その原因が解消した後直ちに入力すれば速やかに入力したことになります。
(2) 入力期間にスキャン保存したがタイムスタンプを付さなかった場合
入力期間内に単なるスキャニング作業を完了しているだけでは「国税関係書類に係る記録事項の入力」の要件をみたしません。タイムスタンプを付すまでして完了したと認識します。
スキャナ保存した書類は訂正や削除の履歴を確認することができる状態でなければなりません。タイムスタンプを付すことで「改ざん」を防ぐことができ「真実性を確保する」という目的が達成されるのです。
タイムスタンプ事業者のなかで「一般財団法人日本データ通信協会」が定める基準を満たして認定を受けた業者には「タイムビジネス信頼・安心認定証」が交付されています。タイムスタンプを利用するときには認定事業者を選ぶようにしましょう。
引用:国税庁|一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ
(3) スキャナ画像に不備があった場合
スキャナ画像には一定の解像度が求められます。そのうえで書類が正しくスキャニングされていなければなりません。ピンボケや画像が適切におさまっていないなどのデータは不備となります。
スキャナ画像が不備の場合はデータを訂正します。削除や訂正の履歴を確認できることが必須となりますので、不備のデータに上書きしないように注意しましょう。
まとめ
スキャナ保存制度の利用を考えている企業は多いと思います。すでに導入している企業もあるかもしれません。
法改正のたびに要件が緩和されているとはいえ、まだまだ管理には注意が必要で、経理部門がコントロールしていかなければならない場合もあるでしょう。
スキャナ保存の要件を社内に周知して、不備になると紙の原本と二重管理が必要なことを理解してもらいながら進めていくとよいのではないでしょうか。
『電子帳簿保存法』についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。