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前払費用を仕訳(計上)する時のポイント!資産になる理由は?

前払費用のポイント

「この支払い前払(費用)になるね」と言われて処理方法がピンと来ますか?「前払って前払金?前払費用?」「仮払金とは違うの?」と迷われることはありませんか?

『前払費用』とはどういう性質で、どんな時に使うものなのか。実際の仕分はどのように行うのか、具体例を交えて見ていくことにしましょう。

複数の病院や福祉施設を運営する医療法人において15年以上にわたって経営管理に携わってきた筆者が、その経験を元に分かりやすく説明したいと思います。

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前払費用とは?「決算時点で、未実施の受けられるべき役務がある」場合に用いる

3月末日を決算日(会計期間が4月1日~3月31日)とする企業の場合で考えましょう。

会計期間中のいずれか、例えば7月にむこう1年間分の賃貸契約を行い、1年間分の家賃を支払ったとします。

その後、決算日を向かえた時点において、翌期の4月~6月分については支払は完了している役務(サービス)の提供は受けていない状態になります。

このように、本来受けられるべき役務で未実施の部分がある際に前払費用の処理を行います。

「前払費用を計上する」とは費用を繰延べすること

端的に表現すると「”複数の会計期間にまたがって役務の提供を受けるため”に支払った費用を、当期分と翌期以降分の費用とに分け、繰延べ(持ち越す)する作業」ということが出来ます。

前払費用は企業会計原則では次のように定義されています。

「前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。」

引用:企業会計原則

契約上、享受出来る役務(サービス)のうち、会計期末時点でまだ提供を受けていない分については当期の費用へ算入することが認められていません。これを「費用収益対応の原則」といい、会計処理の基本的な考え方となります。

そのため、前払費用という資産の勘定科目を用いて、未享受分の費用を翌期以降へ繰延べする処理が必要となります。

前払費用は将来役務の提供を受ける権利

どうして前払費用は資産の科目なのでしょうか。

会計分野における資産は下記のように認識する必要があります。

「資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう。経済的資源とは、キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいい、実物財に限らず、金融資産及びそれらとの同等物を含む。経済資源は市場での処分可能性を有する場合もあれば、そうでない場合もある。」

引用:財務会計の概念フレームワーク

契約を締結し、料金を払っているを払っているということは、当期内においてまだ提供を受けていない残り(費用の繰延べ)分について、翌期以降にそれを享受する「権利」を有することとなります。

前払費用は土地や建物、その他の固定資産のようにそれ自体は実物財でもなく、また換金性もありません。

しかし、事業活動において他者から役務の提供を受ける権利がある=収益を生み出す元となり得る権利を有するという意味において、資産計上の処理を行う必要があります。

前払費用の具体的な仕訳例

前払費用は大きく3つのタイミング、①支払を行った時、②会計期末、③翌期に入ってから、行うこととなります。

具体的な仕訳例は次のようになります。

【例】会計期間4月1日~3月31日の企業において、12月1日に、同日から翌年11月30日までの1年間分のリース料24万円を現金で支払った。

①支払を行った時

借方 賃借料 240,000円 貸方 現金 240,000円

一先ず支払った全額を費用として計上します。

②会計期末

借方 前払費用 160,000円 貸方 賃借料 160,000円

当期の費用に参入出来るのは支払った24万円のうち、12月~3月の4ケ月分(8万円)のみです。

そこで将来リースを受けられる残りの8か月分(16万円)の権利を前払費用として資産に計上(振替)します。

③翌期に入ってから

借方 賃借料 240,000円 貸方 現金 240,000円

(借方)賃借料 160,000円 /(貸方)前払費用 160,000円

前期末に資産計上してあった前払費用16万円を再振替えし、当該年度の経費とします。

前払費用は契約期間によって長期と短期に分けられる

前払費用はその役務の提供に係る契約期間に応じて、「長期前払費用」と「前払費用」に分類されます。

  • 貸借対照日(決算期末日)の翌日から1年以内に役務の提供がされるものは「前払費用」として処理します。
  • 貸借対照日(決算期末日)の翌日から1年を超えて役務の提供がされるもの「長期前払費用」として処理します。

火災保険などは長期契約をすることで保険料が割引されることが多く、複数年契約を締結してる企業も多いと思われます。実際にその具体例を見てみましょう。

【例】会計期間4月1日~3月31日の企業において、1月1日に、向こう3年間の保険期間の火災保険料72万円を現金で支払った。

①支払を行った時

借方 保険料 720,000円 貸方 現金 720,000円

支払った全額を費用に計上します。

②会計期末

借方 前払費用 240,000円 貸方 保険料 660,000円
借方 長期前払費用 420,000円

当期の費用に算入出来るのは年額16万円のうち、1月~3月の3ケ月分(6万円)のみです。

そのため、残りの支払済み保険料のうち、来期リースを受けられる12か月分(24万円)の権利を前払費用として、さらにそれ以降の21ヶ月分(42万円)を長期前払費用として、資産に振替(繰延べ)します。

③翌期に入ってから

借方 保険料 240,000円 貸方 前払費用 240,000円

資産計上してあった当該年度分の前払費用24万円を保険料へ再振替えします。

「短期前払費用の特例」に該当する場合は前払費用にしなくてもよい

費用収益対応の原則がある一方で「重要性の原則」といって、重要性に乏しいものについては簡便な処理をおこなっても良いとする考え方が企業会計にはあります。

前述の「賃借料」や「保険料」、「地代家賃」、「借入金利息」など、前払費用の対象となる経費は多岐にわたり、その全てに原則通り繰延べと再振替を行うことは実務を行う上で相応の負担となります。

そこで

「前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。」

引用:法人税法基本通達2-2-14

という処理が認められています。具体的には、以下の適応要件を満たす場合には、その全額を当期の損金へ算入することが出来ます。

 

【適応要件】①~④の全てを満たす場合に限る

①前払費用の要件を満たしていること

  1. 一定の契約に基づいて、継続的に役務の提供を受けるものであるために支払った費用であること
  2. 役務の対価であること
  3. 繰延べ処理によって費用化されること
  4. 支払が済んでいること

②支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものであること

③毎期継続して経費に計上すること

④事業内容に鑑みて原価的要素になる等、重要な費用ではないこと

まとめ

複数の事業年度にまたがって役務の提供を受けるような契約を締結する際には、その支払金額を当期で全てを経費に出来るのか、または一部を翌期以降に繰延べしなくてはいけないのか注意を払う必要があります。

現金の授受があったとしてもその全額が当該会計期の経費となるとは限らないという点、と同時に、次期以降においては現金のやりとりはなくとも経費が発生するという点において、前払費用は減価償却費のようなイメージで捉えるとよいかも知れません。

 

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