研究開発費とは?会計処理での注意点をまとめてみた!

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    「自社独自のシステムを開発して業界の中で存在感を高めたい!」企業のこうした経営の変化に伴い、「研究開発費」の取り扱いが経理担当者を悩ませるケースが増加しています。

    自社ソフトやシステムなどの開発に関する総費用を一括処理する研究開発費は、仕訳や処理のタイミング、減価償却などいくつかの注意点があります。

    筆者自身も第一次産業最大手(東証一部上場企業)が設立した子会社で、経理の実務部隊として5年間勤務した経験があり、自社での開発だけでなく研究開発の委託、その会計処理など様々なケースに携わってきました。

    内訳を作成する必要性や有価証券報告書への記載など、一般的な費用と処理法が違うためずいぶん研究開発費で苦労した思い出があります。

    しかし企業の存続をかけ新たな利益を生み出すために、絶対不可欠なのが「研究開発費」です。

    本記事では、研究開発費の会計処理をわかりやすく説明、処理上の注意点もまとめました。

    研究開発費の定義とは?

    研究開発費の定義は「新しい製品・サービス」「既存の製品に著しい改良を加えたもの」になります。

    しかし抽象的で少々わかりにくいので、日本公認会計士協会が発表している指針をもとに解説します。

    「研究開発」とは?定義を解説

    企業の会計処理の指針となる「研究開発費等に係る会計基準」の中に、どのような原価が研究開発費に計上できるのか書かれています。

    定義
    1 研究及び開発
    研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究をいう。
    開発とは、新しい製品・サービス・生産方法(以下、「製品等」という。)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいう。
    2 ソフトウェア
    ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等をいう。

    参考文献:研究開発費等に係る会計基準(平成10.3.13 企業会計審議会)

    これだけでは具体的にどのような研究と開発が当てはまるのかわからないですよね。

    そこで実務では、日本公認会計士協会が公表している「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」を指標に経理処理を進めることになります。

    研究開発費に含まれる経費は2種類

    企業活動のなかで研究開発に含まれるのは要約すると以下の2つに限定されます。

    1.ゼロから新たに生み出した製品・サービス

    2.既製品に著しい改良を加え生まれ変わった製品

    念のため日本公認会計士協会 が公表している指針を確認してみましょう。

    1. 従来にはない製品、サービスに関する発想を導き出すための調査・探究
    2. 新しい知識の調査・探究の結果を受け、製品化又は業務化等を行うための活動
    3. 従来の製品に比較して著しい違いを作り出す製造方法の具体化
    4. 従来と異なる原材料の使用方法又は部品の製造方法の具体化
    5. 既存の製品、部品に係る従来と異なる使用方法の具体化
    6. 工具、治具、金型等について、従来と異なる使用方法の具体化
    7. 新製品の試作品の設計・製作及び実験
    8. 商業生産化するために行うパイロットプラントの設計、建設等の計画
    9. 取得した特許を基にして販売可能な製品を製造するための技術的活動

    参考文献:「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(日本公認会計士協会 )

    研究開発の定義をみると、新たに作りだされた製品だけでなく既存の製品に手を加えてもOKなことがわかります。

    私が勤務していた大企業でも全く新しい製品をつくるのは莫大な時間とコストがかかるため、すでにある製品にアイデア・工夫を加えたものが主流でした。

    研究開発費に含まれない経費は3パターン

    なかには研究開発に含まれないNG例もあるので注意が必要です。以下のケースは「改良」にとどまり研究開発費での処理はできません。

    1.他から技術を導入して製品を製造

    2.既存の製品の修理、仕様変更

    3.製造過程の工程の見直し、改善

    こちらの基準も日本公認会計士協会が指針を示しているので確認してみましょう。

    1. 製品を量産化するための試作
    2. 品質管理活動や完成品の製品検査に関する活動
    3. 仕損品の手直し、再加工など
    4. 製品の品質改良、製造工程における改善活動
    5. 既存製品の不具合などの修正に係る設計変更及び仕様変更
    6. 客先の要望等による設計変更や仕様変更
    7. 通常の製造工程の維持活動
    8. 機械設備の移転や製造ラインの変更
    9. 特許権や実用新案権の出願などの費用
    10. 外国などからの技術導入により製品を製造することに関する活動

    参考文献:「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(日本公認会計士協会 )

    ポイントは新旧の製品に「著しい違い」があるかです。

    ただ仕様を変更したり修理するだけでは「研究開発」には該当しないのです。

    研究開発費の会計処理3つの手順

    それでは実際の経理実務処理の手順を紹介します。

    手順1.発生した時点で処理

    経理の原則「発生主義」に基づいて、原則は研究開発がおこなわれた期間内に処理します。

    後述しますが、開発そのものを別会社に委託する「委託研究開発」を除き、発生時に費用として処理するケースが多いです。

    手順2.「一般管理費」「当期製造費用」で処理

    製品・サービスの原価とは関係のない研究開発費は、通常一般管理費として処理します。

    ただし例外的な扱いで、当期製造費用に計上する場合もあるため注意が必要です。発生した研究費を現場の製造に関する原価に一括して含めているケースは、分離するのが困難となるため研究開発費としての処理が認められています。

    手順3.一般管理費の総額の注記を作成

    「研究開発費等に係る会計基準によれば研究開発費を一般管理費で処理する際には注記を作成しなければいけません。

    具体的には次のような書き方が求められています。

    【文例】一般管理費に含まれる研究開発費の総額は3,000,000円です。その主要なものは以下の通りになります。

    人件費 1,200,000円

    消耗品費 200,000円

    外注費 1,000,000円

    減価償却費 600,000円

    研究開発費の会計処理の注意点3つ

    一連の流れを見てきましたが、処理する上の注意点を3つまとめました。

    注意点1.「委託開発研究費」処理のタイミング

    製造業やソフトウエア関連の職種で発生することの多い「委託開発研究費」。自社では困難な研究・調査を外部に委託することで大きな効果が生まれますよね。

    研究開発費は発生した時点で処理するのが原則のため、外部団体に委託した時点で費用計上するのが正解と思われがちです。しかし委託開発研究費は、成果を受け取り自社で検収した時点で処理する必要が。

    そのため依頼先に支払った費用は「前渡金」として資産計上後、進捗状況に合わせて費用処理しましょう。実務上は費用計上のタイミングを「検収」とする場合が多いですが、「進捗の度合いに応じて」「請求書を受け取った時点」などの例外も見受けられます。

    注意点2.有価証券報告書の開示

    株式上場や株式発行の状態により企業は有価証券報告書を金融庁に報告する義務が発生。その中で「研究開発活動」の記載は連結財務諸表、個別財務諸表に関わらず開示する必要があります。

    私が以前勤務していた企業の親会社も、財務諸表へ研究開発費を記載していました。これを見れば会社がどの程度開発に力を入れているかわかるので、将来の成長率を予測するのに有効ともいえます。

    注意点3.繰延資産として処理する場合

    会社法では研究開発費は「繰延資産」として処理することが求められています。

    その場合、支出から5年以内に均等償却する必要があり「開発費償却」という営業外費用で経費処理することに。

    また任意で一括償却することも認められるため、会社が黒字に転じてきたタイミングで任意償却するといった使われ方もします。

    関連記事:会社の経費はどこまで落とせる?一覧をまとめてみた!

    研究開発費の仕訳例を紹介

    イメージをつかみやすいよう、実際に研究開発費の仕訳例を紹介します。

    【研究開発費を振り込みで払った場合】

    借方金額貸方金額
    研究開発費500,000普通預金500,000

    【研究開発費を現金で払った場合】

    借方金額貸方金額
    研究開発費50,000現金50,000

    新製品の開発で費用が100万円かかった場合、費用である研究開発費は借方に記載します。一方、普通預金より現金を振り込むときは貸方に普通預金、現金で払ったときは現金と記入します。

    研究開発費の会計処理はポイントを押さえて

    難しそうに思える研究開発費はポイントを押さえて処理すれば、任意に償却できるなどメリットもあります。

    1. 発生時に処理する
    2. 一般管理費として処理する場合は注記(内訳)を作成する
    3. 委託の場合はタイミングに注意する
    4. 繰延資産に繰り入れた場合の償却方法

    トヨタ、ソニーなどの大企業だけでなく、会社の利益確保のため自社開発の必要性は高まっています。ITの発達にともない中小企業でもソフトウエアや新製品の研究が今後増々ふえるでしょう。

    そう考えると自分の会社も研究開発費を計上したプロジェクトがいつ始まってもおかしくありません。いざ研究開発費の会計処理を頼まれたが、どうしたらいいかわからない!という事態を避けるため、今から少しずつ知識を増やしていきたいですね。

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