税金・保険料

租税公課とは?計上する税金一覧や仕訳・消費税区分をわかりやすく!

更新日:2024.02.25

この記事は約 4 分で読めます。

「勘定科目の租税公課ってどんな時に使うの?」 「租税公課の言葉の意味とは?」
そんな疑問を持たれたことはございませんか?
日常生活では馴染みのない「租税公課」という言葉、経理ではよく使う勘定科目です。

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ここでは租税公課の言葉の意味から、経理上の使い方や注意すべきポイントを押さえて説明していきます。
経理を10年以上担当し、租税公課で扱った仕訳例や消費税区分を参考にご案内します。租税公課を理解し、適切に使うことで、経理処理がよりスムーズに行えるようになります。

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租税公課(そぜいこうか)とは経費で落とせる税金や公的な負担金

まず日常的に聞きなれない言葉、「租税公課」について確認します。租税公課は公租公課(こうそこうか)とも言われ、「租税」と「公課」の2つの言葉から成り立っています。それぞれの意味は次のとおりです。

  • 租税:国税や地方税の税金
  • 公課:国や公共団体などに対する租税を除く公的な課金。交付金や会費、罰金などが含まれる

言葉の意味を理解したところで、経理上の勘定科目についてご説明していきます。租税公課とは、販売費及び一般管理費の費用勘定科目で、事業に関する税金や公共団体の会費などの経費を計上するために用いられる科目です。

経費にできない4つの租税公課に注意!

租税公課は費用の勘定科目ですので、会社の経費になります。ただし国税庁では租税公課について、次のような条件を明記しています。少し分かりにくいので、順にご説明します。

(1) 法人税、地方法人税、都道府県民税及び市町村民税の本税
(2) 各種加算税及び各種加算金、延滞税及び延滞金(地方税の納期限の延長に係る延滞金は除きます。)並びに過怠税
(3) 罰金及び科料(外国又は外国の地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含みます。)並びに過料
(4) 法人税額から控除する所得税、復興特別所得税及び外国法人税
参考:国税庁 No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期

1.法人税、地方法人税、都道府県民税及び市町村民税の本税

法人税や法人住民税(都道府県民税や市町村民税)は所得に課される税金のため会社の経費になりません。法人税や法人住民税については、別の勘定科目「法人税・住民税及び事業税」を用いることが多いです。
決算につき、法人税等の税額を計算し20万円であった。
法人税・住民税及び事業税 20万円 / 未払法人税等 20万円

2.各種加算税及び各種加算金、延滞税及び延滞金並びに過怠税

延滞金は、法律の規定通りに納税をしていない事に対して課される懲罰ですので当然損金算入できません(経費になりません)。

3.罰金及び科料(外国又は外国の地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含みます。)並びに過料

罰金は(2)と同様に法律の規定通りに納税をしていない事に対して課される懲罰ですので当然損金算入できません(経費になりません)。

4.法人税額から控除する所得税、復興特別所得税及び外国法人税

法人税から控除する税金(所得税、復興特別所得税及び外国法人税)は、控除されますので当然損金算入できません(経費になりません)。

経費でも法人税の計算に含めない(損金不算入)租税公課がある

法人税の計算をするときは、次のような計算を元に税額を決めます。「損金不算入」とは、損金に含めない・経費にならないという意味です。
益金 - 損金 = 所得 *所得の金額によって税額を算出
益金や損金は、馴染みのない言葉かもしれませんが、企業会計では次のようにいいます。こちらの方が理解しやすのではないでしょうか。
利益 = 収益 - 費用 *企業がいくら儲かっているかを知る
つまり会社の費用ではあるけれど、法人税の計算に際しては含めない、ということになります。
経費については、こちらの記事に詳しく説明があります。
https://www.keihi.com/column/4463

経費にできる租税公課の一覧

上記以外の租税公課は損金算入できます。主な租税公課は次のとおりです。いずれも事業に要する税金であって、個人の税金は含まれません。

  • 印紙税
  • 固定資産税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 事業税
  • 都市計画税
  • 地価税
  • 利子税
  • 自動車税
  • 自動車取得税
  • 自動車重量税

租税公課の仕訳例1.:印紙税

印紙税は課税する文章を作成した際に、印紙を貼付・消印することで納付する税金です。
200円の収入印紙を現金で10枚購入した。
租税公課 2,000円 / 現 金 2,000円
収入印紙に関しては次の記事に詳しく説明があります。
引用:領収書に貼る収入印紙の金額とは?印紙金額の一覧と注意点を解説

租税公課の仕訳例2.:固定資産税

固定資産税は固定資産に対して課せられる地方税です。賦課課税方式といわれる、納める金額が計算された納付通知書が送られてきて、納税する方法です。支払いは「一括払い」と「年4回払い」が選択できます。原則として賦課決定のあった事業年度に計上し損金算入します。
固定資産税の納付通知書が届き総額80,000円のうち、第1期分の20,000円を現金で納付した。
租税公課 80,000円 / 現 金 20,000円

/ 未払金 60,000円

*「年4回払い」を選択し、実際に納付した事業年度に損金処理することも認められています。

 賦課課税方式による租税
不動産取得税、自動車税、固定資産税、都市計画税などの賦課課税方式による租税については、賦課決定のあった事業年度となります。
ただし、納期の開始日の事業年度又は実際に納付した事業年度において損金経理をした場合には、その損金経理をした事業年度となります。
参考:国税庁 No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期

租税公課の仕訳例3.:個人事業主の家事按分

個人事業主の場合、相続税など個人に係る税金は経費で落とせません。ただし家で仕事をしていたり、個人と仕事で兼用している自動車など、自宅にかかる固定資産税や自動車税を、租税公課を使って経費で落とすことが可能です。
この場合、個人と仕事で使用する割合で、按分する必要があります。
自動車税5万円を支払った。家事按分は50%である。
租税公課 25,000円 / 現 金 50,000円
事業主貸 25,000円

租税公課の消費税区分は原則「不課税」

各種の税金を租税公課で経費処理する際は、消費税区分は原則「不課税」です。ただし「非課税」の17項目に該当する取引がありますので注意が必要です。17項目については、下記の国税庁のサイトをご参照ください。

主な非課税取引:国等が行う一定の事務に係る役務の提供
(5) 日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
(7)国、地方公共団体、公共法人、公益法人等が法令に基づいて行う一定の事務に係る役務の提供で、法令に基づいて徴収される手数料
なお、この一定の事務とは、例えば、登記、登録、特許、免許、許可、検査、検定、試験、証明、公文書の交付などです。
参考:国税庁 No.6201 非課税となる取引

代表的なものは収入印紙ですが、その他に印鑑証明書などを発行する行政手数料があります。本来の言葉の意味からしても、行政手数料は「公課」に含まれません。租税公課でなく勘定科目「支払手数料」を使う会社もありますが、いずれにしても消費税区分は「非課税」にします。

税込経理方式における消費税の租税公課扱い

税込経理方式を採用していると、課税売上に係る消費税等は売上金額、仕入れに係る消費税等は仕入金額等に含めて計上し、消費税等の納付税額は租税公課として必要経費又は損金に算入します。
税抜経理方式では、課税売上又は課税仕入にかかる消費税等は、仮受消費税等又は仮払消費税等とされ、企業を通り過ぎるだけの税金に過ぎず、企業の損益に影響はされません。従って、仮受消費税等から仮払消費税等を控除した金額については租税公課は使いません。
いずれの方式を採用しても、最終利益は変わりません。税抜きと税込みの仕訳から比較してみます。
商品を20,000円で仕入れ、50,000円で販売】*税抜・消費税8%

 税込み仕訳税抜き仕訳
仕入時仕入21,600円
現預金21,600円
仕入20,000円
現預金21,600円
仮払消費税1,600円
販売時現預金54,000円
売上54,000円
現預金54,000円
売上50,000円
仮受消費税4,000円
決算 租税公課2,400円
未払消費税2,400円
仮受消費税4,000円
仮払消費税1,600円
未払消費税2,400円

 
税込経理方式では決算時に、租税公課を計上します。結果として最終利益は、税込経理方式でも税抜経理方式でも同じ額になります。

 税込経理方式税抜経理方式
売上高54,000円50,000円
売上原価21,600円20,000円
租税公課2,400円
利益30,000円30,000円

まとめ

日常生活では馴染みのない租税公課ですが、税金に係る勘定科目なので、必ず使います。損金算入できない租税公課については、経理に携わる人間であれば理解しておく必要があります。また個人事業主は、事業に用いる個人の税金を家事按分で経費計上でき、節税効果に繋がります。
また消費税の扱いは煩雑ですが、区分や税抜・税込の内容を把握し、日々の入力処理を行っていきましょう。
そんな煩雑な日々の経理処理には、経費精算システムがおすすめです。下記の記事を参考にしてみてください。

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